　甘い電流に飲み込まれ、天高く連れ去られる。

　一瞬の無重力状態の後、空中へ放り出されたように一気に張り詰めていた全身の力が抜けていく。突然の落下に頭の中が真っ白になる。

　一花が声にならない悲鳴を上げた。これで二度目だ。

　最初は舌で。次は指で。

　小さな体を隈なく探り、見つけ出した性感帯に彼女が最も良い反応を示したやり方で刺激を与える。廉司はこの一時間程で一花の体を八割がた知り尽くした。

　果てた彼女の中からゆっくり二本の指を引き抜く。透明な愛液が光る糸を引いた。

　まだ快楽の波が退き切っていないのだろう。

　一花の括れた腰はゆるやかに反り、白い腹が大きく上下している。

　呼吸を促すように、その薄い肌をゆっくりと撫でる。すると一花の体が釣り上げた魚のように小さく跳ねた。

　こんな反応をされては堪らない。自分の欲は抑える。そう決めていた意志は崩壊寸前だった。

　髪を撫で、唇を吸い、ピッタリと体を重ねて上から抱きしめる。

　小さな体がビクついた。彼女の内腿に、服を脱いだ廉司の屹立した男根が触れたのだ。

「……嫌なら我慢する。嘘じゃない」

　挿入だけがセックスだとは思わない。

　二度も一花の悦ぶ顔が見れた。満足だ。八割がた。

　だけど。

「お前と気持ち良くなりたい。お前と、繋がりたい……許してくれるなら」

　顔中にキスの雨。一花は啄むような口づけで安心する。これも今日知った。

　なのに、返事は返ってこない。

　やはり抵抗があるのだろうかと諦めかけた時、ずっとシーツを握りしめていた一花の手が背中の龍に触れた。

　初めての反応に驚いて、廉司は一花の顔を覗き込んだ。朱色に染まり、泣き腫らした瞳が見上げてくる。

「……り」

「？」

　聞き取れなかった言葉をもう一度求めると、恥ずかしそうに横を向く。

「いち――」

「ゆっくり……」

　消え入りそうなその返事に歓喜し、呼吸のまだ整い切らない唇を噛みつくように貪った。高みを目指す龍にしがみつく一花の指に力が籠る。

　その夜、廉司は生まれて初めて心から想いを寄せる女を抱いた。

　二人の息遣い以外、何も聞こえない静かな夜だった。

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