1/11_GINJI-ギンジ- 初稿


人物 

武井銀二(22)スタントマン

武井渋男(45)銀次郎の父


金田勝(25)俳優

村上鉄矢(45)監督


鎌谷正美(33)メイクさん

石見加奈子(20)小道具さん・銀二の恋人


武井君江(43)銀次郎の母

武井聖子(25)銀次郎の姉


槇原茜(25)聖子の友人



〇撮影現場(夕)

 バイクで走っている武井銀二(22)、ヘルメットで顔は見えない。

 銀二のバイク、横転する。

 地面に投げ出される銀二。

村上の声「はい、カットー」

 村上鉄矢(45)の隣に金田勝(25)が並んで立っている。

 金田は武井と同じ服装。

金田「ほら、監督。ギンにやらせたら迫力でたでしょ?」

村上「うぅむ」

 話し込む村上と金田。

 銀二、立ち上がりヘルメットを脱ぐ。

 銀二、頬に大きな傷がある。

銀二「ふぅ」

 銀二のもとに、石見加奈子(20)と鎌谷正美(33)が駆けつける。

加奈子「銀ちゃん! おでこから血ぃでてる」

 加奈子、ハンカチでふいてやる。

銀二「すまねぇ」

鎌谷「アツいわねぇ、お二人さん」

加奈子「そんなつもりじゃ……」

 照れる加奈子。

鎌谷「ねぇ、いまのシーン台本にあった?」

銀二「迫力あったろ?」

鎌谷「どうせまたアイツの思いつきでしょ?」

 遠くの金田の背中をにらむ鎌谷。

鎌谷「いっつも銀ちゃんに無茶なことさせて……今日こそとっちめてやる!」

 銀二、鎌谷を手で制止して、

銀二「マアマア」

 鎌谷、不服そう。

銀二「金田サンが推薦してくれたおかげで使ってもらえるんだ。感謝してる」

鎌谷「だからってなんでもアイツの言いなりになってちゃダメよぉ」

金田の声「おい、ギーン」

 金田、遠くで手招きしている。

銀二「金田サンが呼んでる。いかねーと」

 走り去る銀二。

鎌谷「……それ、銀ちゃんに買ってもらったの?」

加奈子「え?」

鎌谷「今日してるピアス。初めてみるわ」

加奈子「あ、はい……」

鎌谷「結婚はいつの予定?」

加奈子「あはは……」


    *  *  *


 村上と金田のもとに銀二やってくる。

銀二「金田さん、なにか?」

金田「相変わらずシケたツラしてんなおまえ」

銀二「スンマセン」

金田「オレじゃなくて、監督が用だってよ」

銀二「はあ?」

 村上、台本を銀二へさしだす。

村上「これ」

銀二「……?」

村上「次の現場、おまえを主役に推薦しようと思ってな」

 銀二びっくり。金田はおどろき、そして不服。

銀二「スタント……ですか?」

村上「主演だよ」

銀二「自分が?」

村上「だからそう言ってんだろ。それオーディション用の台本だから来週までに読み込んどけよ」

銀二「……」

 銀二、台本を村上に差し出し、

銀二「いや、無理ですよ。オレ……」

 受け取らない村上。

村上「やりたくないか?」

銀二「今までセリフある役どころか、顔でる役すらやったことないんですよ」

村上「あぁ、知ってる。今までおまえのこと見てきたが、きっといい演技する」

銀二「……」

 差しだした台本をひっこめようとする銀二。

 その台本を金田が乱暴にかっさらう。

金田「監督ぅ。ギンには無理っすよ。こいつはスタントしかできないんすから」

 金田、銀二の頬の傷を揶揄するように、自分の頬に指で線を引く。

 銀二の表情、暗くなる。

金田「オレにやりますよ。じゃあそういうことで」

 金田、台本をもって立ち去る。

 銀二、少し残念そうだが、どこか安心したような表情。

村上「ったく、アイツも困ったヤツだな」

銀二「監督、じゃあ自分もそろそろ……」

 銀二、会釈して去ろうとする。

村上「待て」

 村上、先ほどと同じ台本をもう一冊取りだして銀二に押し付ける。

村上「金田には内緒にしとけ」

銀二「でも自分は……」

 銀二、手で頬の傷を押さえる。

村上「……」

銀二「……」

 銀二、受けとる。

 台本をもつ銀二の手、震えている。



〇武井家・外観(夜)

 一階がバイク屋。

 照明の下でつなぎ姿の武井渋男(45)がバイクの整備をしている。


〇同・ダイニング(夜)

 食卓で銀二が夕食を食べている。

 武井君江(43)、台所でスマフォを操作している。

君江「聞いたわよぉ、銀ちゃん」

 カニのハサミがとびでた蟹クリームコロッケを小皿に移す銀二。

銀二「なにを?」

君江「次の撮影、主役に抜擢されたんだって?」

 銀二、顔をしかめる。

君江「加奈子ちゃんから聞いたよ」

銀二「……オーディションに推薦されたってだけでまだ分からないよ」

君江「自信ないの? 銀ちゃんなら大丈夫よう」

銀二「そうかな……」

 頬の傷にふれる銀二。

 銀二の顔、曇る。

君江「どういう内容の話なの?」

 渋男が部屋に入ってくる。

 銀二、渋男から顔をそむける。

渋男「母さん、メシー」

君江「はいはい。ちょっと待ってね」

 茶碗を用意する君江。

渋男「なんかあったのか?」

君江「銀ちゃんが次の撮影で主役をもらったんだって」

渋男「ホントかよ、オメー」

 銀二、渋男と目を合わさない。

君江「でも、不安なん。」

 渋男、鼻で笑う。

渋男「無茶いうなよ、母さん。こいつは主役なんてガラじゃねえよ、なあ?」

 銀二、キッと渋男をにらむ。

渋男「顔の傷ばっか気にして卑屈でよぉ、そんな暗い男が主演のドラマなんて誰が見る?」

銀二「ごちそうさま」

 食卓から乱暴に立ち上がる銀二。

君江「銀ちゃん、おかわりは?」

銀二「いらない」

 銀二、出ていく。


〇同・銀二の部屋

 銀二の部屋、俳優のポスターなどが貼ってある。

 机の上の本に付箋が何枚も貼ってある。

 部屋は片付いていて、几帳面そう。

 銀二、ベッドで寝転んで新品の台本を読んでいる。

銀二「……」

 台本をとじて、ベッドのすみに置く。

 遠くから父親の笑い声が聞こえてくる。

 銀二、ムッとする。

 台本をとってページをめくる。

銀二「……」

 起き上がり机からペンをとって台本に書き込みを始める。


〇撮影現場(朝)

 現場にやってくる銀二。

 燃える一斗缶の周りにスタッフたちがたむろっている。

銀二「オハヨーーっす」

 銀二の元にスタッフたちが集まってくる。

 鎌谷も。

鎌谷「聞いたわよ、銀ちゃん。主演任されたんだって? 私たちもみんな協力するわ。ねえ、みんな?」

 スタッフたち、好意的に頷く。

銀二「話に尾ひれついてるよ。オーディションに出ないかって監督に誘われただけだ」

鎌谷「監督のお墨付きってことでしょ。きっと受かるわよぉ」

銀二「どうかな……」

鎌谷「ねぇ、ホン読みやってみてよ」

銀二「いや、ちょっとオレは……」

鎌谷「どうせ昨日の夜、ガッツリ読み込んでるんでしょ?」

銀二「……」

 銀二のもとに金田やってくる。

 銀二、とっさに台本を背中に隠す。

銀二「金田サン、おはようございます!」

金田「おう、おはよう」

銀二「……」

金田「やんのか、それ?」

銀二「……」

金田「オレもおまえのホン読み、見てみてえなあ。やれよ、ギン」

銀二「金田サン、勘弁してください」

金田「やれよ」

 銀二、台本をひらく。

 震える声で演技をする銀二。

 それを見て、スタッフたちの表情が曇る。

 金田、わざとらしく笑いだす。

金田「おいおいおい、冗談だろ? そんなんでよくやろうと思ったな」

銀二「……」

金田「ま、せいぜい頑張んな」

 金田、銀二の頬を揶揄するように自分の頬に指で線を引く。

 立ち去る金田。

銀二「……やっぱりオレには無理だよ」

 頬の傷を手でおさえる銀二。

銀二「これがあるからカメラに映れない……」

鎌谷「そんなことだろうと思って、銀ちゃんのために特殊メイクの用意してきたのよ」

 大量のメイク道具をだす鎌谷。

鎌谷「ちょちょいと消しちゃいましょ」

銀二「……」


〇メイク室・内

 鏡の前に座らされている銀二。

 目をとじている。

 鎌谷が、銀二の前でメイク道具を構えている。

鎌谷「この傷、深いわね。神経までいってるの?」

銀二「あぁ……」

鎌谷「もし聞いていいなら、なにで?」

銀二「……小六んときにバイクで、ちょっとな」

鎌谷「実家、バイク屋だったわね」

銀二「あぁ」


   *  *  *


鎌谷「……終わったわ」

 ゆっくりと目をひらく銀二。

 鏡に映った自分の顔がぼんやりと見えてくる。

 顔の傷は消えている。

銀二「――!」

 思わず、自分の頬にふれて確認する銀二。

鎌谷「あんまりベタベタさわっちゃだめよ」

銀二「ありがとう!」

 銀二、とても嬉しそう。

 動きにも活力に満ち始める。

 微笑む鎌谷。

鎌谷「もう一度、台本読んでみて」

銀二「え? あ、うん……」


〇同・外

 銀二のホン読みの声が聞こえてくる。

 堂々として、演技が上手い。

鎌谷の声「さっきとは別人じゃない。これならいけるわよ」

銀二の声「そうかな?」

 二人の会話を立ち聞きしている金田、舌打ち。


〇武井家・ リビング(夜)

 銀二、ひょいと顔をだす。

銀二「ただいまー」

 テーブルで話している武井聖子(25)と槇原茜(25)。

聖子「おかえりー」

茜「お邪魔してまーす」

銀二「あーえーっと、姉ちゃんの……」

茜「高校時代のクラスメートだった槇原茜」

銀二「あードモ、弟の銀二です」

茜「私が銀二くんのこと忘れてるわけないじゃーん」

銀二「……?」

聖子「こいつ、生意気に茜に告白されたの忘れてるね」

銀二「え? あ、ああー……。美人になってたので分からなかったス」

茜「いいのよ、別に。今日はこれ、見せに来たんだ」

 茜の指に光る指輪。

銀二「え、あ。おめでとうございます」

茜「ありがとう」

聖子「顔だけはいいからねーこいつ。高校の頃めっちゃモテてたし」

銀二「……どこがいいんスかね、オレなんて」

 銀二、頬の傷の位置にふれる。

銀二「こんな顔に傷がある男……」

聖子「えっ! ってかアンタ、傷きえてんじゃん」

茜「ほんと! 気づかなかった」

銀二「腕のいいメイクさんが知り合いにいてさ」

聖子「へえ。すごいもんねえ」

銀二「てか、フツーすぐ気づくだろ?」

聖子「いや言われるまで全然気づかなかった……ねえ?」

茜「私は久しぶりに会ったし」

銀二「姉ちゃん、酔ってんじゃねえの?」

聖子「いやまだ酔ってないし。帰ってくるなり、なーんかテンションは高いなーとは思ってたけど」

銀二「すぐに気づいてくれると思ってたのにショックだなぁ」

聖子「アンタが思ってるほど、みんなアンタの傷なんて気にしてないから。ねえ?」

茜「銀二くんの傷なんて、女子には見えてなかったよ?」

 銀二、納得がいかない。

銀二「じゃオレ部屋で稽古するから」

聖子「ん。がんばんなさい」

茜「頑張ってね」

 立ち去る銀二。


〇武井家・銀二の部屋(夜)

 銀二、机で台本に注釈を入れている。

 一階からギューイインなどと機械を整備する騒音が聞こえてくる。

銀二「……」

 騒音が激しくなる。

 銀二、額をおさえる。

 騒音が鳴ったりやんだりする。

銀二「……」

 銀二、立ち上がってその場をうろうろする。


〇同・階段(夜)

 階段をおりる音。


〇同・一階バイク屋(夜)

 渋男がバイクを整備して、ギュイインと騒音をだしている。

 銀二が大股で渋男のほうへやってくる。

銀二「父さん、男がうるせえ。集中できないからもうちっと静かにしてくれねえか?」

 銀二の声も、騒音でかき消される。

渋男「ああ? なんだって?」

銀二「音がうるせえって言ってんの。こんな時間に整備すんな! ったく、仕事が遅いんじゃねえの?」

渋男「あ、オレの仕事にケチつける気か?」

銀二「明日が本番なんだ。今日だけはたのむよ」

渋男「主演のオーディションだっけか? どうせおまえには無理だ。あきらめな」

銀二「うるせえ! やってみないとわかんねえだろ」

渋男「……じゃあ試しに今ここでやってみろよ。出来次第で仕事は終わりにしてやる」

銀二「ああ? なんでアンタの前で……」

渋男「なんだ? できねえのか? オレ一人の前でも演技できねえのに、カメラの前でできると思ってんのか?」

銀二「やってやらあ!」

 渋男、フと笑う。

 銀二、演技をする。

 堂々とした迫真の演技。

 それを見る渋男の表情、真剣。

銀二「……どうだ?」

渋男「……」

銀二「なんとか言ったらどうだ?」

渋男「全然ダメだな。そんなへたくそじゃ明日の結果も見えたな」

銀二「なにぃ!?」

 銀二、カッとなって渋男の胸倉をつかむ。

渋男「おめー、客を殴るのか? 大根役者のくせに。さっさとやめちまえよ」

銀二「うるせえ!」

 銀二、渋男の顔を思いきり殴る。

 のけぞる渋男。

銀二「オレは本気なんだ!」

 銀二、渋男をにらみつける。

渋男「……」

 銀二、家を飛び出す。


〇道(夜)

 バイクで走っている銀二。

 ヘルメットからのぞく視線は怒りの表情。


〇武井家・ダイニング(夜)

 渋男、頬に氷枕をあてている。

 殴られた部分、銀二の頬の傷と一緒。

 固定電話の受話器を耳にあてている君江。

君江「あなたが怒らせること言うからよ」

渋男「あいつが本気かどうか知りたかった」

君江「それでどうだったの?」

渋男「……」

君江「電話でないし。ちゃんと今日帰ってくるのかしら」

渋男「行先はどうせいつものとこだ。心配ない」

君江「あぁ、港の」

 スマフォをいじっている聖子。

聖子「昔からなんかあるとそこに行くよね」

君江「お父さんが変な場所教えるから……」

渋男「……」

君江「明日は大事な日なのに、風邪ひいたらどうするの」


〇港・倉庫街(夜)

銀二の声「へっくしょん」

 人気のない倉庫街。

 銀二のバイクが停まっている。

 波止場。

 バイクの灯りで、銀二が台本の文字を読んでいる。

銀二「うわぁ。さみ~……」


〇武井家・玄関(深夜)

 銀二が玄関から入ってくる。

銀二「……」

 君江が駆けつけてくる。

君江「唇の色変わってるじゃない。体こわしたらどうするの?」

銀二「大げさだって。父さんは?」

君江「今朝早かったからもう寝てるよ」

銀二「顔合わせたくないんだ。明日の朝、出かける前も」

君江「そのほうがいいかもね。お父さんだって銀ちゃんには成功してほしいと思ってるよ」

銀二「どうだか」

 銀二、階段へ。


〇同・銀二の部屋(深夜)

 ベッドで寝そべって起きている銀二。

銀二「……」


〇武井家・外観(朝)

 雀の声。


〇同・浴室(朝)

 シャワーを浴びている銀二。


〇同・脱衣所(朝)

 風呂上りの銀二、鏡の前で頬をさわる。

 メイクがはがれて手につく。

銀二「あっ、そうだったな」


〇同・リビング(朝)

 風呂上りの銀二、やってくる。

 スーツ姿の聖子、テレビを見ている。

聖子「うそ~~サイアクー」

銀二「どうかしたの?」

聖子「電車停まってるって~」

銀二「そりゃ大変だな」

聖子「自分がバイクだからって他人事かよ」

 銀二、笑う。

聖子「今日頑張れよ」

銀二「うん」


〇道

 バイクで走る銀二。


〇オーディション会場(朝)

 撮影スタジオに銀二がやってくる。

銀二「おはようございまーす」

 加奈子がやってくる。

加奈子「おはよう。これ朝ごはん」

 加奈子からおにぎりを受け取る。

銀二「さんきゅ」

 おにぎりを食べる銀二。

銀二「カマさん見なかった? メイクはがれかけちゃってさ」

加奈子「えっ、今日は違う現場だって」

銀二「……!」

 食べるのをやめ、おにぎりを加奈子に突っ返す。

 ごほごほとせき込む。

加奈子「大丈夫?」

 加奈子から飲み物を受け取り、流し込む銀二。

 スマフォで通話する銀二。

銀二「……もしもしカマさん? 無理なお願いなんだけど、昨日の特殊メイク少し直しにきてほしいんだけど」

 銀二を見守る加奈子。

銀二「えっ、電車の遅延……? まだ……。いや、いい……。ごめん、心配かけた」

 電話を切る銀二の表情、焦り。

加奈子「メイクさんあたってみるね」

 加奈子、足早に立ち去る。

 入れ替わりで金田がやってくる。

金田「よう、ギン。おはよう」

銀二「金田さん! おはようございます」

 銀二、頬をおさえる。

銀二「あ、あの……。メイクがダメになってしまって、メイクさん紹介してくれませんか?」

金田「ほぉ~?」

 金田、意地の悪い顔で笑う。

金田「……それは大変だな? まあ頑張れよ」

 銀二の肩に手を置く金田。

銀二「金田サン!! あの……」

 金田、立ち去る。

 加奈子が駆け足で戻ってくる。

加奈子「銀ちゃん!」

銀二「だれか見つかったか?」

加奈子「それが……」

 銀二の表情、曇る。

加奈子「金田さんに銀ちゃんを手伝うなって止められてるんだって」

銀二「そんな……」


〇同・楽屋(朝)

 事務椅子に座っている銀二。

 台本を読んでいる。

 台本をもつ手が震えている。

 台本を読む銀二の声、自信なさげで頼りない感じ。

 鏡をみて、頬の傷を見ると目をうつむきがちにそらす。

 部屋に金田が入ってくる。

金田「どうした、ギン? 声に覇気がないなぁ?」

銀二「……」

金田「昨日までの威勢はどうした? そんなんじゃ恥かくだけだぜ」

 銀二、聞きたくないといわんばかりに離れようとする。

金田「向いてないよ、おまえ。やめとけよ。顔隠してスタントしてるだけのほうがおまえには向いてるって」

 銀二、歯を食いしばる。

金田「やめちまえよ。どうせ時間の無駄だ」

 銀二、ワッと部屋をとびだす。

 金田、嬉しそうに笑っている。


〇同・オーディション会場(朝)

 会場を不安げにうろうろする加奈子。


〇同・楽屋(朝)

 金田が台本に目を通している。

 加奈子が入ってくる。

加奈子「あの、金田さん、銀ちゃん見ませんでした?」

 金田、ククッと笑う。

金田「あいつなら逃げだしたよ」

加奈子「えっ?」

金田「自分には無理だと思ったんだろうさ」

 加奈子、金田をキッとにらむ。


〇道(朝)

 バイクで走る銀二。


〇港・倉庫街(朝)

 バイクで入ってくる銀二

銀二「!?」

 バイクで横転する銀二。

 バイクから投げ出される。

 倒れたまま、ぴくりとも動かない。

 道路に投げ出されたスマフォの画面割れている。

 画面が光って着信している。


〇オーディション会場(朝)

 電話の呼び出し音。

 加奈子がスマフォを耳にあてている。

加奈子「……。銀ちゃん、どこにいるの?」


〇武井家・リビング(朝)

 君江が掃除をしている。

 テレビのニュースが流れている。

 渋男がソファで新聞を広げている。が、時計をしきりに気にしている。そわそわ。

 渋男の顔には湿布。ふてくされた表情。

君江「もうすぐ始まるわね」

渋男「なにがだ?」

 君江、微笑する。

 固定電話が鳴る。

君江「はぁい」

 電話にでる君江。

君江「……もしもし?」

 渋男、電話の内容を気にしている様子。

君江「えッ! 銀二が!?」

 思わずソファから立ち上がる渋男。

渋男「なにがあった!?」

君江「銀二が会場からいなくなったんだって! 連絡つかなくてどこにいるのか……」

渋男「……」

 渋男、バイクの鍵を取り出し握りしめる。


〇バイク屋・ガレージ(朝)

 バイクにまたがってエンジンをかける渋男。

 君江、やってくる。

君江「お父さん、どこに行くの!?」

渋男「……」

 バイクを発進させる渋男。

 行ってしまう背中を見つめる君江。


〇港・倉庫街(朝)

 地面に倒れている銀二。

 ぴくりと動いて、

銀二「ってて……!」

 起き上がる銀二。

銀二「派手にやっちまったか……」

 離れたとこに横転しているバイクにフラフラと近づく。

 バイクを起こす銀二。

銀二「わりーな、相棒」

 エンジンをかけようとする銀二。

 かからない。

銀二「マジか……」

 落ちているスマフォを気づき拾うが、画面割れている。

 着信があったことを示すランプが点滅しているのはわかる。

銀二「こりゃひでえな、はは……笑えらぁ」

 腕時計をみる。

銀二「もう、どうにもならねーな」

 ごろんと地面に寝転がる。

 手袋を外して、手で頬の傷にさわる。

銀二「オレには、無理だったんだ……」

 見上げる空が晴れ渡っている。

 鳥が飛んでいる。

銀二「監督には申し訳ないことしたな……」

 目を閉じる銀二。

 真っ暗。

銀二「……」

 バイクのエンジン音が聞こえてくる。

 ハッとして身を起こす銀二。

銀二「このエンジン音……」

 バイクに乗った渋男がやってくる。

銀二「……!」

 渋男ヘルメットをとる。

 頬に湿布が貼られている。

渋男「逃げんなよ!」

銀二「オレ……」

渋男「乗れ!」

銀二「……」

 銀二と渋男、見つめあう。


〇道路・海岸線

 バイクで走る銀二と渋男。



/了



疑問点

・スタジオなのか、ロケなのか?

・具体性のなさ

・劇中劇(オーディションの内容)

・好きな俳優くらいいるんじゃ?


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(シナリオ研究)後期 indo @nido1211

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