鼈甲の亀
「鼈甲の簪だね」
「ええ、父がお祝いに」
昨晩、甲羅を剥ぎ取られて内蔵のような姿で泳ぐ亀の夢を見た。
甲羅を剥げば生きられないはずの亀が、哀れに泳いでいたのだ。
妻となる人の髪の上の鼈甲は、あの亀のものではないか。
彼女は怪訝に問う。
「今日は、手は繋がないのですか?」
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