届けられなかった恋文

亡き祖父は、読書家だった。遺品整理のために書斎に入ると、とある女性作家の全著作が揃っていた。

どれも繰り返し読んだ跡がある。一冊の中に一封の手紙があった。心惹かれて開ければ、熱烈な敬愛が書かれていた。

僕は出せなかった理由を理解する。

祖父は、届かぬ恋をしていたのだ。

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