短編集

さかき原枝都は(さかきはらえつは)

空と私と海と

君が恋したのはこの青き海だった。

僕が恋したのはあの高き空だった。

僕らは永遠につながることは出来ない。

海と空。

深きその想いは君の想いと同じ。


「海はなぜ青いの?」

「空はなぜ青いの?」


海の青さと空の青さは違う。

同じ星にありながら、その異質なる世界は二人を繋ぎ合わせることはない。

人は海に触れることが出来る。

だが、空を自由に飛び回ることは出来ない。

翼がなければ人は僕は空に舞い上がることさえできないのだ。


僕は知る。

人には限界があることを。

海は深く光を閉ざし、暗闇の底を持つことを。

彼女の心は深き海のように積み重なり、闇の色に包まれる。

闇はすべての光を閉ざした。


空から降り注ぐ、永遠の光さえも……。


高き空に上れば、その永遠なる光は強さを増すだろうか?

僕は高き空に舞い上がることで、光を僕一人のものにできるのだろうか?

その光のかけらを僕は君に届けたい。

暗闇に包まれたその君の心に、光のかけらを届けてあげたい。


僕らは永遠に交わることのない存在。

だけど、空と海は繋がっていることを僕らはまだ知らない。


僕らは永遠に背を向けあい求めていた。

手の届かぬその想いは、僕の心であり君の気持ちでもあったように。

僕らは決して繋がることはないと思っていた。


差し伸べたその手に僕の光が君に届く。

そんな日が来ることを僕はただ、夢見ていた。


二人は交わることのない二つの世界。

されど、きっと君に僕の心は届くだろう。


空と海のはざまにいる、この私が必ず届けてあげるから。

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