第34話 尹大目《いんたいもく》:曹家への忠誠を忘れなかった奴僕出身の殿中校尉

尹大目いんたいもくの「大目」は字であり、名は伝わっていません。


幼いころから曹家で奴僕をつとめ、曹爽そうそう文欽ぶんきんからの信頼も厚く、やがて天子の側仕えをする殿中校尉にまで出世しました。


司馬懿がクーデターを起こしたさい、尹大目は曹爽の説得を命じられました。

司馬懿は曹爽の処遇について「免官ですます」と言ったので、それを信じて曹爽に兵を解かせます。

ところが司馬懿は約束を破り、曹爽を処刑してしまいました。


司馬懿の死後、長男の司馬師しばしがあとを継ぎます。

やがて文欽が反乱を起こすことになりますが(第12話「文欽ぶんきん:粗暴なる反逆の猛将」の記事参照)、尹大目はその説得にも向かいます。


尹大目は司馬師の目のこぶが大きくなり、やがて命を失うことを知っていました。

待てば道は開けます。文欽に「しばらく行動を慎むよう」伝えたのですが、文欽はその意図に気づかず、「おまえは先帝の御恩に報いようともしないのか」と怒り、弓を射ようとしました。

尹大目はどうにもならず、「事は失敗しましょう。ご武運を」と涙を流しながら引き返していきました。


司馬家に従いながらも、曹家への忠義は忘れず機会を伺いつづけていたのでしょう。

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