第28話 何晏《かあん》:風流をきわめた快楽主義者

 何晏かあんは字を平叔へいしゅくといいます。

 妹が皇后になったことで大将軍にまでのぼった肉屋、何進かしんの孫です。


 何進が十常侍じゅうじょうじに殺されたのち、母の尹氏が曹操の側室なったことから、曹操の養子として育てられてきました。


 文学を好み、おなじく文学者である王弼おうひつらとともに「玄学げんがく」の基礎を築いたといいます。

 玄学というのは『老子』や『荘子』などの道教思想を儒教思想と交えて研究する学問で、ありのままに生きるという「無為」を重視しました。


 何晏の生きざまはまさに自由奔放。色を好み、「五石散」という覚せい剤を愛用するといった快楽主義者です。

 また自己愛が強く、つねに白粉を手放さず、歩くときも自分の影をふりかえって眺めるほどだといいます。

 

 曹爽そうそうが朝廷で権力を握ると、仲のよかった何晏も政権の中心人物になります。

 しかし司馬懿しばいのクーデターによって曹爽が殺されると、何晏も連座させられることになりました。


 このときに司馬懿は、曹爽派の者たちの裁判をわざと何晏に担当させました。

 何晏は殺されたくない一心で処刑者のリストをつくっていきます。


 しかし最後に司馬懿は、

「まだ処刑せねばならぬ者の名前が足りないだろう」

 といいます。

 何晏は自分のことだと気づき、泣く泣く自分の名前を書いて処刑されたといいます。


 ただの快楽主義者ではなく、玄学の基礎を築き、完全な形で残る最古の論語注釈書『論語集解』を編纂したことから後世でも評価されている人物です。

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