聖剣はかく語りき〜転生聖剣は奴隷少女と旅に出る〜

森川 蓮二

プロローグ お喋りな男、〇〇に転生する

 やぁ、俺の名前は○○○○。


 え? なんで名前が伏せ字なのかって? 


 知ってもどうせ違う名前がつくし、これから話すことにはあんまり関係ないからだよ。


 生まれはもちろん借金まみれのオタク国家日本。

 俺は一介の会社員だったが、ひょんなことから異世界に転生することになった。


 普通なら訳もわからず呆然とするか、


「来たぜ異世界テンプレ! これで無双しまくってハーレム作れる!」


 なんてことを考えるだろう。


 ラノベやアニメでそういう世界に触れていた俺は残念ながら後者の反応である。


 だがしかし世の中そう簡単には出来ていない。


 目覚めた俺は、薄暗い洞窟らしきところにいることにすでに嫌な予感めいたものを感じていた。

 普通こういう時は、明るい場所にいるものだと思っていたからだ。


 その嫌な予感を証明するように、俺自身の意識はあるが体の感覚と嗅覚が感じ取れず、聴覚はいつも通りに機能しているのに視覚は何故か三六〇度全方位を見渡せる。

 だが光は天井の方から僅かに差し込んでいるだけで、遠くまでは見えない。


 しかし俺はその僅かな光の中で地面に水が溜まり、そこに自分の姿が映し出されていることに気づく。


 柄に煌びやかな装飾を施された一本の剣となった俺の姿を。


「な、な、なんじゃこりゃああぁぁッ!」


 それを見た俺は別の某刑事ドラマの殉職シーンの如き叫びをあげた。


 というわけで異世界で俺に与えられた姿は、人でも動物でもなく苔むした台座の上に鎮座する聖剣で、ただ引き抜かれるのを待つただの「物」だった。


 もし神様というものがいるのなら俺はこう言っていただろう。


 あぁ、くそったれな神よ。

 なぜ我に人の身を与えて下さらなかったのですか、と。

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