僕のアルカロイド  (お題:オムライス・野村・アルカロイド)

 「アルカロイド」とは


 自室で、課題レポートを提出するために調べた単語。

 僕は、数多表示される情報を見て、ふ~ん。と思った。


 文字ばかりで読む気にはなれなかったし、その大半が僕に必要ない情報だったからだ。

 正直読んだところで理解できるとも思わない。


 そして、膨大な情報の海から拾い上げた僕なりの「アルカロイド」

 

 アルカロイドという名称は、「植物の灰のような」という意味を示す。

 他の多くの天然化合物の分類群と比較して、アルカロイドは大きな構造的多様性を持つことが特徴で、アルカロイドに関する統一的な分類は存在しない。

 

 今これが僕の中の「アルカロイド」になった。

 かなり曖昧な存在である。

 

 そこで僕はふと思った。

 この「アルカロイド」という存在は大きな社会に似ていると。

 

 特に理由は無い。

 その曖昧さや、キーワードが僕にそう思わせたのだ。

 

 しかし、「アルカロイド」を調べつくしたとき、僕の中の「アルカロイド」は、あるべき姿の「アルカロイド」に飲み込まれ、消えてしまうのだろう。

 

 これは、知らない事から発生する想像の世界。

 僕だけの世界なのだ。


 「もう、まだ課題終わらせてないの?」

 いつの間にかそこにいた彼女。

 そんな彼女は僕の顔を覗き込んでそう言った。


 「え?!アルカロイドの意味を調べてたの?!そんな事しなくても、補助脳をネットに繋げば一発で情報がアップされるのに!」


 彼女は勝手に僕の思考をスキャンして喋る。

 全くもって、つまらない奴だ。


 「あ!またそんな事思ってる!良くないよ!そんなんだからみんな離れて行っちゃうんだよ!」

 そう言って、彼女はオムライスをバン!と机の上に置いた。


 「ありがと」

 僕はそう言って、オムライスを口に運ぶ。


 ?!

 僕は思わずそれを吐き出しそうになった。

 チキンライスだと思っていたそれには、僕の嫌いな人の肉が使われていたからである。


 「あちゃぁ。バレちゃったか。人間臭さ、あんまり抜けないんだよね…」

 非難めいた僕の視線に、彼女が苦笑する。


 「でも、好き嫌いせずに何でも食べないといけないんだからね!特に今は食べ物が少ないんだから!」


 彼女はそう言った。

 僕だってそんな事は分かっている。


 …ところで、僕は何で食事なんて摂らなくちゃいけなのだろう。

 彼女は充電で十分なのに。


 「…そんな事どうでも良いじゃない、野村くん。私は貴方の彼女で、貴方は私の彼氏。それで十分でしょう?」


 …確かにそうだ。

 知るという事も大切だが、知らないという事も大切なのだ。


 知れば「アルカロイド」のように自由に妄想ができなくなる。

「オムライス」の様に、もう食べられなくなってしまうかもしれない。


 真実なんていらない。

 僕はこの甘い日常をむさぼり、これからの続きを妄想し続けるのだ。


 「そうだね…。良い子良い子」

 彼女の調整された体温が僕を包み込む。


 「僕はもう子どもじゃないんだ!やめてくれ!」

 僕はそう言うも彼女の腕を払う事は出来なかった。


 この愛だけは本物だ。

 きっと、どんなことがあろうとも。


==========

※おっさん。の小話


 ハッピーエンドが…。ハッピーエンドが分からないよ…。

 ハッピーエンドを模索するおっさん。です。


 今回はアルカロイドとアンドロイドをかけてみました。


 知らない方が良い事、いっぱいありますよね。

 洗脳されている方が案外幸せだったり?


 まぁ知った時に地獄を見るのは目に見えていますが。


 無知は罪なり、知は罰なり。

 おっさん。の座右の銘です。


 作中に出て来た人肉に抵抗があるという方が居ました。

 最初は魚にしようかなぁ…。と思ったんですけどね。


 無知の罪深さや、知る事による罰をより深くするために人肉をチョイスしました。

 …優しい方には酷でしたね…。


 でも、全てを知った後、貫ける愛ならば、それもまた本物なのかもしれませんね。

 偽物、本物なんて、見る人次第ですしね。

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