夜をまたぐ白昼の叫び
猫屋 こね
第1話
初めまして。私の名前は『ガルドラン=ギグ=ドランバラクロン』と申す。長い名前ゆえ、クロと呼んでもらって結構だ。
私はいわゆる化け物だ。人の恐怖を糧として生きている。見た目は、そう、色々と変えられるのだが、今はピエロの姿を模している。赤い鼻、白い顔、虹色の髪、上下赤白青のストライプ柄の服、靴は鋭い爪先がくるっと丸まっているものを履いている。この業界では流行っている格好だ。
私は色々なところに現れる。人里離れた森や山の中。或いは廃ビルや廃校、廃病院。だが、決して町中やデパートなど人の密集する場所には現れたりしない。何故なら、それがこの業界の暗黙のルールとなっているからだ。まあ、たまにこのルールを無視する輩がいるようだが・・・なので、今私がいるこの場所はそのルールに乗っ取っている。日本という国の、人里離れたキャンプ場。穴場となっているため、集まるのは数グループのみ。多くても20名程度の餌が来るだけだ。この国は今、長期連休の真っ最中らしい。そして猛暑のこの時期、避暑地を求めて間違いなく適量の餌達が集まってくるだろう。
さて、どうしてやるか・・・
しかし、今の私には力がない。色々と特殊な能力は持っているのだが、こと腕力だけで言えば、おそらく、子供と真っ向勝負しても、こちらがやられてしまうかもしれない。それほどまでに私の力は枯渇してしまったのだ。
・・・勘違いしてもらいたくないのだが、誕生したての私はかなり凄かった。わざわざ考えを巡らさなくとも、思うままに餌達の恐怖を堪能できたのだ。あいつにさえ出会わなければ・・・あの女のせいで・・・私は力の大半を失ってしまった。なので、今では慎重に物事を運ばなければ恐怖を味わうことができないのである。
私は霊体に近い存在だが、物理攻撃を受けてしまう。勿論、それで死ぬことはないのだが、仮に大ダメージを受けてしまうと、また更に力を失ってしまうのだ。しかし、力を取り戻す方法はある。それは餌達の恐怖を食らい続けること。恐怖とはすなわち、我々にとっては食料であり、エネルギーでもあるのだ。なので、私は不用意に人間を殺したりはしない。あくまでも私が食らうのは恐怖であって、人間そのものではないからだ。人間の減少は、イコール食料の減少に繋がってしまう。まあ、中には人間そのものを食らう輩もいるのだが・・・私にとって、そいつらは敵でしかない。同じ化け物であっても、敵味方は存在するのだ。それは人間でも同じことがあるだろう。
と、まあ私の説明はこれくらいにしておくとして・・・どうやら餌達が集まってきたようだ。キャンピングカーが2台、普通乗用車が3台、次々と狭い河原に駐車してきた。キャンピングカーからは四人家族が一組、三人家族が一組。お互い面識は無さそうだ。。乗用車からは、おそらく大学のサークルか何かの集まりなのだろう、計12人の男女が降りてきた。みんな楽しそうだ。・・・いいぞ、いいぞ。こういう人間達から発する恐怖は、さぞ格別だろう。
さあ、そろそろ始めるぞ。君達の恐怖を、しっかりと私に味あわせてくれたまえ。
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