第72話 王の間
暗闇を四角く切り取る光。
それは、迷宮の終わりを告げていた。
光を潜る二人。
ここは迷宮。
仮にも宮と付くならば、あるかもしれない場所。
そこは、終着に造られた広い空間。
わざに、壁近くに立てられた柱には刻まれた装飾。そして、柱全てに掲げらている灯りが闇を退け、この広間を明るくしていた。
床石は通路と異なり、化粧石により美しい紋様を施されていた。
その紋様は床に留まらず、立ち上がり壁を埋め、天井まで届き、この間を特別な空間へと昇華していた。
そう、ここは迷宮の王の間。
しかし、王の間の奥にあるはずのものが無い。
それは、玉座と呼ばれ高い位置と地位から見下ろす場所。自分がこの部屋の支配者だと示す椅子。
代わりにあったのは、巨大な岩。椅子ではなく磔のための土台。
その証拠に、胸に巨大な杭が刺さったままの人ならざる死体が横たわる。
更に、死体の手足は鎖で岩に繋ぎ止められている。まるで暴れる猛獣を、この場に留めておくかの様に。
岩の前に背を向け立つ人。
「マーシュ神父様!」
白頭巾を飛び越え、大声で名前を呼ぶ。
その声は、反響し王の間を埋め尽くす。
「そんなに、大声を出さなくても聞こえますよ。」
優しい声のマーシュ神父が振り向きながら応える。
目線を床に落とした白頭巾、
「ペーター!」
マーシュ神父の足元に横たわったいた。
「お二人共、お早かったですね。」
最初に会った時のままに、優しい笑顔。
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