第55話 指弾


『パリーン!』

 白頭巾が撃ち出したモノが、女人狼の鼻先に当たり砕けた。

 そして、銀色の小さな輝きが霧の様に撒き散らさせる。

 それは、月の明かりを纏い女人狼の顔を包む。



「グァァァァァ!」

 呻き声。

『ドシャァァァ!』

 次に地面を掴むはずだった両手は、自分の顔面を掻きむしる。


 結果、地面に頭から叩き付けられ転がった。


 銀色の輝きは、目、鼻、口の粘膜から侵入し女人狼を焼く。


 遅れ、耳の中からも焼いた。


「どう? 銀粉の味は?」

 愉しげに聞いた。


「グァァァ!」

 苦しげに転げ回る。それが返事。


(逃げなくては!)

 野生の本能か、怪物の勘か。


 よろよろと二本足で立ち上がる。

 何故って? 残りの二本は、顔を掻きむしるのに忙しかったから。


「逃げられるわけないでしょ。」

 左手から放たれる二本の鈍い光。


「ギャァァァァ!」

 新たな激痛。それは、両足の甲を地面へと縫い付けた銀の棒手裏剣。


「神父さん。杭打機!」

 突如、大声で呼ばれ驚く。だが、直ぐに、

「はい!」

 用意しておいた杭打機を手に取り、弾を込め直した拳銃と共に持ってた走り出した。


「さぁてと。」

 おもむろに女人狼に近付く白頭巾。そして、右の短剣が銀色の軌跡描く。


『ボトリ』

 女人狼の左腕が二の腕辺りから離れ、地面でのたうち回る。


「次はと。」

 また、銀色の軌跡が走る。今度は左太腿辺りから脚が離れた。

 片脚で支えられなった女人狼の体は左側から地面に倒れる。



「白頭巾さん。はい。」

 神父が、筒に取手の付いた杭打機を渡す。

「ありがとう。神父さん。」

 短剣を鞘に戻し受け取る。


 女人狼の腹を右足で踏むと、杭打機を構え心臓の位置へ、

「その魂。人に還(かえ)りなさい。」

 祈り言葉で、引かれる引き金。


『ボスゥゥ!』

 爆発音と共に煙を筒の横側から吹き出し、先端から打ち出される杭。

 それは、女人狼の心臓を地面に打ち付けた。


「ギャァァァァァ!」

 断末魔。

 それは神父が耐えられない大きさ。無意識に耳を庇った両手を抜け、鼓膜を叩き膝を付かせた。

 目を瞑り、歯を食いしばり耐える。

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