第37話 入口


 そこは、張り出した岩場の下。一部が崩れ、洞窟らしきものの入口が顔を覗かせていた。


「近くを調べてみて。何か目印が無い?」

 白頭巾の指示に、

「目印とは、どんなものでしょう?」

 神父が聞く。


「判らない。この地形を考えると、岩に刻んでいるかな?」

「岩ですか…。」

 見回すが辺りは岩だらけ。



「あったぞ!」

 声をあげたのはカート。流石の狩人。


 指差したのは、大きな岩の根元ひ刻まれた印。それは、半分土に埋まった状態。

「見付け難くて、見付け易いの模範解答の場所ね。」


「ペーター。よろしくね。」

 やっぱりという顔。荷物を下ろすと、土を掻き出した。


 しばらく、掘る作業。



 しゃがみ込み掘り出された印を指でなぞりながら確かめた白頭巾。

「間違ってないようね。あの洞窟で…。」

 崩れむき出しになった洞窟の方を見る。



 カートが崩れている場所へ行き、

「任せな。」

 調べ始める。



「こりゃあ、最近と言っても、大分前だが…。」

 矛盾したものの言い方に自分が戸惑っていた。

「なんて、言ったら良いのか…。」

 考え、

「そうだな…。洞窟を塞いでからは時間が立っているが、崩れてからは最近。少なくとも数ヶ月前ってところだ。」


「えっ!? 洞窟を塞いだ?」

 神父が驚く。

「ああ、どうみても積まれた石や土は人がやってる。」

 聞いた話を思い出し、

「では、中に…。」

 自然と白頭巾の方を向いた神父。


 考え中の白頭巾。


「どっしようかな…。」

 それは、お菓子でも選んでいる様に見えた。


「何がですか?」

 神父が聞く。

「ここで、カートさんと神父さんは、待ってて貰おうかと思ったんだけど…。」

「はぁ…。」

 意図が掴めず曖昧な返事になった。

「襲われたらどうしようかって思って…。」

「えっ!?」

 思い出すのは、あの朝の出来事。


「何だ? 熊でも出るのか?」

 カートを見ながら神父は、

(この人は知らないんだ。)


「熊ちゃんよりは、恐ろしいかな?」

 口元は笑うが、目は笑っていない。

「一緒にいれば、起きている事の把握はできるかなって。」


「ペーター。灯りはある?」

「ランプが一個…。」

「そうか。足りないね。」


 カートを向き、

「松明(たいまつ)作れそう?」


 カートは道中を思い出し、

「少し戻った所に、使えそうな樹があったと思うが。」

「良かった。じゃあ作業開始ね。」







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