第36話 森

 早朝。


 まだ眠い目を擦りながら起き出すペーター。辺りはまだ暗い。


「ご主人様。起きてください。」

「後…。」

「五分はないですよ!」

「もう…。」

 諦め起き出し、準備する白頭巾。


 家を出ると、東の空が白んでいた。

 しかし、街中はまだ暗かった。そこを二人はカートの家に向かう。



 カートの家が見えて来ると、手を振る人が居た。服装からして神父さんなのだろう。



 カートの家の前。


「お早うございます。」

 神父が先に挨拶し、

「おはよー。」

「お早うございます。」

 二人が続く。


 扉が開き、

「お早う。」

 カートが出て来た。

「皆、揃ってるな。早速行こうか。」

「一つだけ、お願いがあります。」

 右の人差し指を立てながら白頭巾が、

「森では、カートさんの指示に従います。でも、もし戦闘になったら私の指示に従ってください。」

「戦闘? 熊は出るが戦う事はないと思うがな。」

「戦う相手は別にとして、もしもの話しとですよ。」

 ニコリと首を傾げた。

「判ったよ。今日の依頼者はあんただ。」




 森の入口。


 足を止め、振り向くカート。

「こっからは、絶対に俺の前に出るな。」

 その目は狩人。

「後、俺の歩いた場所以外は歩くなよ。」

 流石熟練者と言った貫禄。

「この二つ、守れなきゃどうなっても責任は持てないぜ。」

 黙って頷く三人。


「よっしゃ。行くぜ。今日中に帰って飲むぜ。」

 妙に気合が入っていた。



 最初のまだ入口と言った辺りは、森も狩人も穏やか。だが、気は抜いていないのが伝わって来る。

 付いて行く三人も、それ程苦では無かった。まだ、人の領域が多いのだろう。



 無言のまま歩き続ける四人。


 少しの休憩を挟み、更に奥へと分け入る。



 ある時、ある場所。雰囲気が変わった。


 森から感じられるもの。

 ここからは、人の領域では無い入るなら覚悟しろと言わんばかりに。


 そして、狩人から感じられるものも変わる。緊張が一気に高まった。


 後ろを振り向いたカート。


 三人は無言で頷く。



 進む内に気が付くカート。

(妙だ。動物の気配が全く無い。それどころか、虫も息を殺して何から見付からない様にしている?)




 茂みを抜けると、そこは光の下。

「こっからが、行くなって言われてる場所だ。」


 岩がゴツゴツとむき出しになっていて、木が疎(まば)ら生えている。先程までとは大違いの場所。


「こんなところで何しょってんだ?」

 少し考え、

「そうねぇ。伽話の正体を見ようかと思って。」

「何だそりゃ。」



 白頭巾は高台に登ると、辺り遠眼鏡で見回し、

「確か、埋めたって…。」

 聞いた話を口に出しながら。


 三人は、その様子を黙って見ている。


 右から『スーッ』と流し見。


 何かに気が付いた様に、少し戻すのは人の性か。


「あれ?」

 やはり、何かを見付けたようで遠眼鏡をポケットにしまい。

「あっちに、行きましょ。」

と、指差したのは遠眼鏡で見ていた方向。

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