第10話 相談


 神父は重い足取りで市長の所へ戻った。


 扉を叩き入ると、医者は治療を終え部屋を出ようとしていた。

「今は、薬で落ち着いています。」

 神父に告げ、

「ですが、長時間は…。」

 釘を刺す。


 頷きベットで横になる市長の側に座ると、

「いかがですか?」

 聞いた。


「薬のお蔭で、だいぶ楽になった。」

 気丈に振る舞う市長の顔は青白かった。

「そうですか、良かったです…。」


 神父の重い表情に気が付く市長。

「何か問題でも?」

 逆に心配された。

「あの専門家…、白頭巾さんの事なのですが…。」

 言いながら部屋の中にいる使用人を、ちらりと見た。


 その意味に気が付いた市長。

 自由に動く左手で合図を送り、部屋を二人だけにした。


「白頭巾さんからなのですが…。」

 もう一度言ながら、市長の耳元へ近付き、

「ゴニョゴニョ。」

 囁く。


「な、何ぃぃぃぃぃ!!!」

 台詞こそ違えど、神父と同じ反応だった。

「何故、そんなに高いんだ!?」

 こちらも反応は同じ。


「何でも、あの手の怪物を倒すのに銀を大量に使うとか…。」

 その言葉で、市長は苦しみの中で見たあの光景を思い出した。


 沈黙。


 市長が考え込む。


「よし、判った。払おう。」

「大丈夫なのですか?」

「なぁに、いざとなったら領主様に直談判するまでよ。」

 痛みを抑え笑うが、我慢できず苦痛に顔が歪む。

「それは心強い…。」

 神父も笑顔で返した。


「そうだ。」

 市長は何か思い付き、

「駄目なら、あの死体を領主様に献上するか。」

「それは、良い考えですね。」

 自分はこのノリは好きだと感じる神父だった。


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