第2話 事件



 まだ人が夜を恐れていた時代。


 昼は人が支配し、夜は魔物が支配していた。



 この街に転属になってから、早二ヶ月。少しは馴染んできたと思うのはレイモンド神父。



 朝の静寂を破る音。それは、ノックではなく、叩く音だった。

「神父様! 大変です!」

 繰り返しながら、扉を叩く。


 寝間着のまま、扉を開き、

「どうしたのですか?」

 穏やかな声。扉を叩いていたのは市長付きの使用人。

「また、殺られました!」

 眠気が、一気に吹き飛び、

「直に準備します。」

 奥へ向かった。


 着替えを済ませ出ると、

「市長に連絡は?」

 使用人に聞いた。

「そちっは、別の者が行っています。」

「解りました。では、こちらは現場に向かいましょう。」

 使用人は無言で頷く。



 街外れ。

 そこが現場だった。


 神父が到着すると数人の男が既に来ていた。その中の一人が気付き、

「神父様。」

 その声に反応し、

「市長。」

 返す。


 男達の所まで行くと、

「見てください、神父様。前と同じです。」

 言われ、無残に転がる死体を覗き込む神父。


 観察し、

「一度なら偶然もありましょうが、これは明らかに狙っての仕業だと…。」

「神父様もそう思われますか、私達も同じ結論です。」

 市長はどうしたものかといった表情。


 しばらく考えた神父は決意したように、

「やはり、専門家に頼りましょう。」

「専門家ですか…。」

 困惑する市長。

「以前、お世話になったリチャード神父様に聞いたことがあります。」

「はぁ。」

 市長は、半信半疑といった面持ち。

「リチャード神父様に聞いてみましょう。」

「お願いします。」

 藁にもすがる思いだった。

「直に、手紙を認(したた)めます。」





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