あの空の上で(part2)
囲会多マッキー
第1話
お婆ちゃんの別れから3年の月日が過ぎた。
いつもの空。いつもの雲。それは、いつも見ている景色と何ら変わらない。しかし、いつもと変わらない景色だからこそ面白いものがあるのではないか。そんなふうに思って3年が過ぎた高校生の春。
「いよいよ高校生ねぇ」
彼女は、僕の婆ちゃんだ。2年前に亡くなった。だからこの声はきっと聞き間違いだ。だって、婆ちゃんは死んでいるのだから。
「随分と大きくなったねぇ。小学6年生の時なんてもっと小さかったのに」
やはり声が聞こえる。しかも今回は家族全員に聞こえているようなのだ。
「いま、お義母さんのの声しなかった?
「お前も聞いたのか? もしかして、
「うん。確かに聞こえた」
姿は無いので気のせいだろう。まさか、いるはずが無い。
「俺も居るぞ⋯⋯」
その言葉は俺の耳元で囁かれた。
「うわ⋯⋯っ!?」
この声は⋯⋯爺さ⋯⋯いや、あのジジイじゃないか!? まぁ⋯⋯仲は良いんだけどな。
「翔大〜天国でも婆さんが叱ってくるんだよ〜」
ようやく、爺ちゃんは見えるようになった。死んだ時と相変わらず元気に見える。
「それは爺ちゃんが悪い」
もちろん満場一致である。すると、爺さんは「タバコ買ってくる」とだけ残し家の玄関を開けて出ていってしまった。
「で、なんでここに婆ちゃん達がいる訳?」
「いやぁ。戻ってきちゃった」
「戻ってきちゃった」じゃないから⋯⋯そんなあっさりで終わる問題じゃないからね⋯⋯? 3年前に最後の約束って言ってたよね⋯⋯。でも、そんなことはどうでも良くて⋯⋯
「おかえり。婆ちゃ⋯⋯っ!」
急に涙が溢れてきた。まさか戻ってくるとは思ってなかった。昔の記憶が頭の中を駆ける。俺は小さな時のようにお婆ちゃんに「よしよし」とされる。
「ごめんね⋯⋯翔大」
「良かった⋯⋯本当に⋯⋯」
やっぱりお婆ちゃんの「よしよし」が1番落ち着く。子供みたいかもしれないが、今だけは許して欲しい。
「お義母さんは何故ここに⋯⋯?」
「あら? 貴方達にも見えてたの?」
気づかれていることに、気づいていなかったらしい。お婆ちゃんが初めて口を開いて固まっている。
「そういえば、お爺ちゃんは知らないかい⋯⋯? さっきから見ないんだけど⋯⋯」
「タバコ買いに行ったよ」
「そりゃいけない!」
今までで1番慌てている。その理由がまったく分からないのだが⋯⋯それを見かねたのか
「ちょっとの間だけお婆ちゃん消えるよ。少しテーブルの上の新聞を見ていておくれ」
「うん」
お婆ちゃんはすぐに見えなくなった。その直後、新聞だけが浮いた。俺はさっきお婆ちゃんが驚いていた理由に気がついた。
「もしかして⋯⋯」
「うん。だから今、爺さんはお金だけが浮いている状態のはずなんだよ。」
その恐ろしさは半端じゃない。知らなかったら俺でも腰を抜くだろう。これは本当に急がなくてはならないのだ。
「でも、お爺ちゃんのやりたいことを邪魔してはいけないよ」
「え・・・・・・? でも・・・・・・」
「お爺ちゃんは今まで沢山の人に尽くしてきた。最後のわがままのひとつくらい許してあげたいんだよ」
それはお爺ちゃんの何か秘密を知っているようだった。
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