メリーバッドエンド?「別の世界から」

「もし……もし……」

「優ちゃんか、ごめん、今日は本当にごめん。俺謝るから、許してもらえるまで謝ってやるぞ、何回だって」


 言い過ぎだろうか?かえって脅迫めいたようにも聞こえるかもしれない。

 だが、これは嘘偽りない俺の本心なんだ、伝わってくれ!


「……なるほど、相野優、貴様は本当に何も覚えていないんだな」


 それまでの彼女とは全く異なる、表現しづらいが、そう背筋が寒くなるような、そんな口調で彼女は言った。


「優ちゃん?いや……違うな、誰なんだお前は?」

「私? 私か……私はお前から名前を奪った人間だ」

「何? 何いってるんだよ……わけわかんないぞ」

「もう、この状態であればいいのかもしれないな。お前は元々私だった」

「は?」

「正確には、相野優という女性だった」

「お、おい」

「実験だったんだよ。私は皆に好かれているお前が嫌いだったからな。その体を奪ってやったのさ。そしてその魂を、次元の異なる世界の雑踏で見つけた適当な人間に突っ込んでやった」

「……」

「どうやら魂もその男と完全に融合したらしいな。もう真実を知った効果で元に戻ることはあるまい。安心したよ、私は」

「ちょっと待っ……」

「さようならだ、もう電話で話すことはない、こちらは安心してこの体で楽しませてもらう」


 そのとおり、それきり電話がかかることはなかった。

 言っていることの意味はさっぱりだし、俺が俺であることに違いはないのだけれど、一体彼女は何だったんだろうか?

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