休日にもう一度電話

 なぜ彼女は電話に出てくれないのか……?


 実は彼氏がいないというのは嘘で、休日デート中なのだろうか?


 いや、平日に女子会をやっているほどだから、単純に休日もそのノリで出かけているのかもしれない。


 電波の届かないところに出かけているだけということも、もちろんあり得る。


 昼食をトーストで軽くすませた俺は、そんなことを考えてベッドに横になっていた。そのうちにどうやら寝てしまったらしい。


 気が付くと時計は午後3時を回っていたんだ。

 ……。


 俺は無駄に休日を消化してしまった感をぬぐえなかった。


 そうだ。

 このままで終われば本当に無駄になる。

 もう一度、もう一度。


 そして、俺はまだ半分ボーっとする頭のまま、キーパッドに自分の番号を打ち込んでいた。


 『通話または通信中』が表示される。


「もしもーし?」


 おっ!

 おっ!

 おっ!


「優さんなんでしょ?無言電話はひどいですよ」

「ああっ、ごめん。実はお昼にかけたんだけどさ、その、優ちゃん出なかったから……」


 おいおい、我ながらこれではストーカー行為の告白みたいな感じじゃないかよ。

 俺は今回も気の利かない自分を責めた。責めまくった。


「あーそっか、さっきまでTOYOシネマズ渋谷で映画見てたんですよ。ガジラ対ファビュラス!」


 なんだそのゴージャス姉妹が出てきそうな雰囲気の響きは……。

 しかし、そんな映画最近やっていただろうか?

 そんな疑問が頭に浮かんできたが、それよりも俺的には、映画を見ていたという事実のほうが大事だったんだ。


「なるほど、それじゃつながるわけないよな」

「ほんとごめんなさい」

「いやいや、優ちゃん悪くないから」

「そう言ってもらえると助かります」

「そういえば今渋谷にいるの?」

「そうですよー、これから少しぶらぶらしてから帰ろうかなって」

「あ、あのさ……」

「はい?」

「逢えないかな?」


 ここで勝負に出られたことは、自分でも意外だった。

 例によって必死だったので何を言ったのか詳細は覚えていない。

 だが、彼女と渋谷ハチ公前で午後6時集合と約束した。

 それは間違いないんだ……ないはずなんだ。

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