隣の部屋の魔王さま

@soron-g

くすぶる気持ち

ゆっくりと目を開けると月の優しい光が窓から降りそそいでいた。

あまりにも幻想的なシチュエーションで鬱陶しく思うと共に、腹部に思い出したかのように鈍痛が甦る。

「く…」


そうか、俺は気を失ってしまっていたのか。

鈍痛と共に軋む身体によって少しずつ記憶を紡いでいく。

それは少年にとってあまりにも屈辱的で、あまりの怒りで気が狂いそうになる。

「あのアマぁ…」


座った椅子から立ち上がろうとするも、違和感がある。

ギシ…という椅子の軋む音がするだけで腕が上がらない。

いくら力を入れようとも一向に動かせる気配がない。

「あんの、クソアマぁ!」


怒りに任せて思いっきり暴れてみるも、身体に縛り付けられている椅子が一緒にダンスを踊るようにドタンバタンと付いてくるだけで、一向に緩む気配もない。

「俺の身体に何しやがった!」


いつもならこんな束縛、一瞬の内に破壊できる。

その気になれば村のいくつでも更地にすることができる。

だが、全力を出しても無情なまでに椅子から離れる事ができない。

「…くくく、」


余りの情けなさに笑いが込み上げてくる。

「くくく、はぁっはっは!」


見てろよ。

俺が本当の力を取り戻したとき、お前をメッタメタのギッタギタにしてやる…。

謝ったり、許しをこうたとしても許しはしない。

例え、世界の果てに居たとしても探しだしてやる。

後は、俺が力を取り戻す時間の問題だ。

これから先の事を考えるだけで笑いが込み上げてくる。

「はぁっはっはっはっh」


「うるさい!!!」

バタンッ!と凄い勢いで開け放たれた扉から、可愛らしいクマさんのパジャマを来た般若が居た。


ガタガタガタガタガタ


身体が勝手に震え出す。

な…なぜだ!

か…身体が言うことをきかぬだとっ!!


「次に五月蝿くしたら…ツブスから…」


バタンッ!と勢い良く扉が閉められると、緊張の糸が切れたように身体が脱力した。

そして、ふるふると徐々に身体が震えだし…

「ぅ…ぅわぁぁあぁあぁ」


魔王は年甲斐もなく関を切ったように、余りの怖さと悔しさと情けなさに泣き出した。


「…うるさい。」

少女は、五月蝿すぎる魔王にもう一度怒りに行こうかと考えたが、これ以上五月蝿くなっては堪らないと、諦めて寝た。


そして、ゆっくりと夜はふけていく。





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