第3話

 翌日、俺はバトルロイヤルで、開始早々レイを巻き込んで自爆するという大失態を犯した。その後別モードに移動して開かれた反省会では、レイが今までの俺のプレイも含めて長々と説教を始めた。

 彼の分析は冷静かつ的確で、俺は返す言葉もない。

「まぁ、まだ二日目だし、場数を踏めば少しはマシになるよ」

 レイは言葉遣いが丁寧な割に口が悪かった。


 俺は気を取り直して、昨夜聴き込んだ楽曲の感想を伝えることにした。

「あのバンドはセカンドアルバムの二曲目が良かったな」

「へぇ~、具体的にどんなところが?」

 そんな風に突っ込まれるとは思っていなかったが、俺は特に気に入った歌詞や、全体を聴いて浮かんだイメージなどを話す。

「マグは歌詞を重視するタイプなんだね。僕はどちらかというと、アレンジとか楽器隊のテクニックが気になる方だから」

「あー、俺そういうのは良くわかんないや。メロディと歌詞のハマり具合が心地よかったらオッケーな感じ」

 実際のところ、そこまで深く考えて音楽を聴いているわけではない。

 その日も俺はレイからオススメのアーティストを教えてもらい、昨夜と同じように聴きながら寝た。


 それからは、勉強そっちのけでゲーム漬けの日々が続いた。

 峻ちゃんは塾の他に部活、更に別のスポーツクラブにも通っている今時の多忙な高校生なので、プレイ時間は少なめだった。

 レイは、いつログインしてもオンライン状態になっていた。大体平均で五試合くらいバトルロイヤルで遊んで、後は敵の出ないモードでテクニックを学びながら、音楽やアニメの話をした。


 俺は自分では割と色々なジャンルの音楽を満遍なく聴く方だと思っていたが、レイのオススメアーティストはアイドルからシンガーソングライター、バンドとバラエティに富んでおり、ジャンルもアコースティックなものからEDM、果てはメタルまでと実に幅広かった。そして、日を追う毎に俺の好みストライクな楽曲が増えていった。

「スゲーな、俺そこまでジャンル広げて発掘してなかったから。今は地下アイドルでもクオリティ高いのな」

「そうだね、色んなタイプがいて案外面白いよ。その代わり差が凄いから、ヒドいのはホント幼稚園のお遊戯会レベルだけど」

 相変わらずレイの毒舌は冴え渡っている。


 俺は学校から帰ってから夕食と風呂を挟んで寝るまでの間、ほとんどレイと一緒に過ごしていた。

 その日のバトルロイヤルは惜しくも二位だった。俺達は、デュオの強豪になりつつあった。

 しかし、俺は今日レイにどうしても伝えなければならないことがある。

「ごめん、明日から期末の勉強しなきゃいけないから、一週間ゲーム休むよ」

 俺はそれだけ間が空くとゲームの腕が鈍る気がして嫌だったが、こればっかりは仕方がない。

「へぇ、ちゃんとテスト勉強するんだね。意外」

 失礼な。俺はやる時はやる男なのだ。

「ウチ母親が変なとこ煩くてさ。昔っからテスト一週間前はゲーム禁止なんだよ」

「あぁ、ゲーム機取り上げられたって言ってたな。了解、じゃあまた一週間後」

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