第50話 真相 中編
「ごめんなさい。もうかれこれ十七年近くこう言うキャラを演じて来たもんだから、染み付いちゃてね。ついついふざけてしまうのよ」
恥ずかしそうに学園長はそう言った。
このふざけたキャラを演じてきた?
十七年と言うと美佐都さんが生まれた後くらいの頃か。
「あの人が死んで、美佐都が生まれた。そして御婆様が同じ苦しみを持っていた事を知った。でも周りは私達の事を御婆様の圧力による悲劇のヒロインとして同情と哀れみの目で見てきてね」
学園長は少し悲しげな顔でそう言った。
その状況は想像がつくな。
なんせ今しがた乙女先輩と桃やん先輩がまさにそんな態度を取っていたからだ。
「言葉で言っても多分通じない。だから目一杯元気に振舞って、おちゃらけて、『私は悲劇のヒロインじゃない! 私は幸せなんだ!』ってアピールする為に演じてきたの。けれども、勘違いは晴れなかったし、今思うと逆効果だったのかも? と思うところは有るわね」
お姉さんがやせ我慢して痛々しいと言っていたのはこう言う事か。
しかし、現在のこの捕らえ所が無い態度は、俺のぬらりひょんスキルと同じで、自分の居場所を作る為に身に付いたものなのだろう。
周りの目に負けず、ある意味自分を通そうと学園長なりに頑張った結果だったんだな。
方向性は違うけど、悲しみに負けじと守りたい物の為に自分を変えて立ち向かった創始者と学園長は同じ血なのだろう、とてもよく似てると思った。
「元々の私は、周りには『才色兼備、性格も穏やかで真面目。まさにお嬢様の鏡』と言われていたのよ。でも、今じゃ元の私がどうだったのかなんてすっかり忘れてしまったわ」
え~? 本当かなぁ~? 性格が穏やかで真面目なお嬢様の鏡とか言われる人がお姉さんに不良狩りなんて依頼するかなぁ~?
まぁ、これは俺の想像が入っているんで、もしかしたら本当に不良の
それに、親父の為に自分を犠牲するような人でも有るんだから、芯が強い真面目な性格ではあったんだろう。
ただ忘れてしまったとしても、今はその真面目なお嬢様と言うのに戻って話をして欲しいかな。
「まぁ、この態度が悪かったのよね。橙子ちゃんには本当に悪い事をしたわ」
「後でちゃんと藤森先輩に謝ってくださいよ」
「は~い、分かりました~」
顔に笑みを浮かべながら手を上げて、ノンキにそんな事を言ってくる学園長。
う~ん、本当に分かってるのかな?
「話を戻すわね。三人でのお茶会で本音を言い合って美佐都も私も御婆様も大分落ち着いてきたの。私も学園に復帰して今では学園長よ。美佐都も自分が『望まれ愛された子』と言うのを理解した。だけどね父親に関してはダメだった」
「ダメだったって、どう言う事ですか?」
「やっぱり会った事も見た事も無い人に対して父親と言われてもピンと来なかったみたいね。心を閉ざしていた影響も有るのかもしれないわ」
「そんな……。けど、会った事は兎も角、見た事も無いって写真とかは無かったんですか?」
お金持ちって披露宴とか派手にしそうだし。
それを見せたら良かったんじゃ。
「アハハハ。う~ん、それはね。残ってなかったのよ……うん」
? 何かを誤魔化そうとしてる?
それとも、和佐さんを喪ったあまりの悲しさに処分してしまったって事だろうか。
「まぁ、美佐都はね、そんな見知らぬあの人より、小さい頃から活躍を聞かされ憧れた牧野会長を父性の象徴視する所だけは変わらなかったわ。なんせ牧野会長や生徒会の皆の写真だけは色々と残ってたし特にね」
小さい頃の刷り込みなのか?
それに、幼い頃に刻み込まれた『愛の無い結婚』やら『望まれぬ子』と言う言葉が、拭いきれない呪詛として残っていたのかもしれないな。
けどこれに関しては、やはり言ってはダメだけど学園長の手落ちだと思う。
「ただ中学生くらいになると、美佐都の中でいつしか自分も学園の生徒会に入って小さい頃から聞いていた牧野会長以上の活躍をしてみせると言う夢が出来たみたいでね。牧野会長は父性と言う対象から目指すべきライバルと言う位置付けに変わっていったのよ」
これは美佐都さんも言ってたな。
変わった原因だけど中学生と言う事だから反抗期みたいな物だったのだろうか?
急に父親に対して冷たくなったり『お父さんのパンツと一緒に洗濯しないで!』とか言って凹む父親とかドラマの定番だ。
「とは言っても、まだ少し人前での感情表現は上手く出来なかったりしたのだけどね。それでも今はクールビューティーって便利な言葉のお陰で、それなりに上手くはやっていけてたの」
さっき学園長も言っていた通り、長年別の自分を演じていると元の自分を忘れてしまうってやつだな。
俺だってそうだ、この街に居た頃の自分が、どうだったか覚えていない。
美佐都さんも心を閉ざしてきた事で、元の自分が分からなくなったのだろう。
入学式の時、聞こえて来た美佐都さんの評価はまさにクールビューティーと言う言葉がお似合いだった。
鉄面皮のイメージ通り何でも完璧にこなすが誰に対しても冷たい。
いや、男に対しては絶対零度か。
打上げの際に、乙女先輩も俺に頼み事をしたのを驚いていたよな。
「そう言えば、中学の頃は女子校に通っていたんでしたっけ?」
ずっと女子校育ちだったって言っていたな。
てっきり、その所為で異性耐性が無いと思っていたけど、理事長の話では違うらしい。
「そうね、親族が経営する学校に入れようかとも考えたんだけど、その頃は私があまり親族の事を信頼出来なくてね。だからずっとお嬢様学校に通わせていたわ。共学って事が心配だったけど、この学園なら私も御母様も居るからね。だから大丈夫と思って入学させたのよ」
親族が信用出来ない……か。
確かに、学園長がこんなキャラなのも親族の目を気にしての事だし、はっきりとは言わなかったけど、美佐都さんが心を閉ざした原因も親族の心無い言葉によるものなのだろう。
学園長にしたら、そんな所に預けるよりも、異性との絡みでボロの出ない女子校とかの方が安心だったって言うのも分かる気がする。
「そして、夢を抱いてこの学園に入った美佐都だけど、あなたも聞いたでしょう? 折角出来たあの子の夢は可哀想な事に粉々に打ち砕かれたのよ」
創始者の一族の箱入り娘、それも感情表現が上手く出来なく一見大人しそうな美少女だ。
お近付きになれるチャンスにと寄って来る輩は多いだろう。
そこで夢に一緒に向かって頑張るような人が居たら良かったのかも知れない。
一つ疑問が有る。なぜ、学園長はそんな美佐都さんを守ってやれなかったのか?
昨日理事長は言っていた。
『美佐都が必要としなかったから』
例えそうだったとしても、無理にでも守ってあげたらこんな事にならなかったんじゃないか?
「いま、牧野くんはこう考えてるわね? 『なんで美佐都を守ってやらなかったのか?』って」
学園長は俺の心を見透かしたようにそう言ってきた。
もしかしてエスパー? いや、今のははっきりと顔に出ていたと思う。
「ええ、理事長にしてもなんで守ってあげなかったんですか? 守ってあげてさえいたら……」
「それはね。あの子に思いっ切り拒否られたからなの」
「は? 拒否られた?」
「えぇ、『余計な真似をしないで。牧野会長ならこんな困難は徹底抗戦を持って叩き潰す筈。私が甘かったわ。これからは一層冷徹に冷酷にそんな奴らを切り捨ててやるわ』と言ってね。……ああなってしまったのよ」
「え? えぇ? そ、そうなんですか。ははは……なるほど……」
ちょっと聞いてたのと違う……。
夢破れて心を閉ざしたんじゃなくて、理想を超える為に心を閉ざしたって事?
これは、乙女先輩も桃やん先輩も知らない事実だな。
ん? と言う事は……?
昨日美佐都さんを泣かせてしまったアレは、そんな決意さえも打ち砕いてしまったと言う事なのか?
冷酷になって切り捨てるなんて、本当はただの強がりだろう。
そんな独裁者みたいな姿が、理想な生徒会長なんて事が有る筈が無いだろう。
傷付いた心を守る為に無理して着込んだ鉄の仮面を俺が壊してしまったんだ……。
「藤森先輩から聞いていると思うのですが、俺は昨日その事で美佐都さんを傷付けてしまいました。前回の生徒会選挙でのあらまし自体は聞いていたのに、男子の先輩達から目を付けられる事に、少し不貞腐れてつい本人の前で愚痴を言ってしまったんです」
鉄面皮となる事で切り捨てた生徒達への罪悪感を、その仮面を打ち砕いた俺がわざわざ拾い集めて突きつけてしまったんだ。
そして知った美佐都さんの胸の内。
あの時の子供の様に泣きじゃくっていた姿が、幼い頃に忘れてきた美佐都さんの本当の姿なのだろう。
俺の懺悔に何故か学園長は微笑んでいる。
「ええ、橙子ちゃんから聞いてるわ。その後のプロポーズもね」
「ぶふぉー!! ゴホッゴホッ。な、何言ってるですか! 違いますよ!」
慌てて否定する俺だが学園長はとてもうれしそうにしている。
「フフフ、ありがとうね牧野くん。美佐都を変えて……いえ、心を戻して、そして救ってくれて。私達がどれだけ頑張っても出来なかった事よ」
皆もそう言うのだけど俺が何をしたのだろうか?
あれは異性耐性が無かった所をたまたまお姫様抱っこすると言う所謂ショック療法みたいな物だと思うんだけど。
違うとなると、何が原因だったんだろう?
「正直そこが分からないんです。何故か俺が変えたとみんな言っていますが、あれってやっぱり今まで女子校に通っていた所為で、異性に対して免疫が無かったのを、俺がお姫様抱っこしたから、それに気付いただけと思うんですよ」
俺の言葉に少し呆れ顔の学園長。
しかし、直ぐに小さく頷き笑い出す。
「ふふふ、美佐都が異性に対して免疫が無い? そんな訳無いじゃない。そうよね、昨日の橙子ちゃんの話じゃ、牧野くんならそう思うか」
理事長と一緒の事を言っているな。
何がおかしいんだろうか?
異性耐性が無いと言うのは、やっぱり間違いなのか?
「女子校と言っても男の先生も居るし、家の関係で式典やパーティーとかに出席した際に同年代の男の子の接触は結構有るのよ。それに生徒会事件の際にもね。言い寄る男や強引に手を出そうとする者も勿論居た。でもあの子は誰に対しても何に対しても心動かす事もせず排除してきたの。別に男性恐怖症や苦手なんて事はないわ。そう、ただ心動かす者が現れなかっただけよ」
心動かす者が現れなかったと言う言葉は理事長も言っていたっけ。
何故俺なのだろうか? やっぱり憧れていた人の息子だからなのか?
「監視カメラで撮られてた映像で見させて貰ったわ。美佐都が階段から落ちそうになった時のあなたの行動と、その後の言葉をね」
そう言えば美佐都さんとの出会いは全て見られていたんだよね。
しかも音声付で……。う~ん監視社会本当に怖いな。
「俺が助けた事で心を開いてくれたって事でしょうか?」
でも、それだけで今まで戻らなかった美佐都さんの心が元に戻るかなぁ?
異性耐性が無いと思ってたから、それも有りかなと思っていたんだけど。
「……階段から落ちそうになった私を、彼はお姫様抱っこで受け止めると『大丈夫ですか!? 怪我とか無いですか?』と尋ねてきたの。私はその邪念の一切無い私を心配する事しか考えていない彼の表情に思わず見惚れてしまった。私は頬が赤くなっていくのを止められない。彼はそんな私を見て一言『かわいい……』と呟く。その瞬間心に火が灯ったの。そして私達の生徒会物語が始まった……」
急に何を言い出すんだ? この人。
俺と美佐都さんの出会いをわざわざ語ったりして、何が言いたいんだろう?
俺が急に始まった学園長の一人語りにキョトンとしていると、とても優しい目をしながらこう言った。
「これはね、私が美佐都に何度も語った私と牧野会長との出会いの一節なのよ」
「はっ? え? どう言う事ですか? 今の俺と美佐都さんの出会い場面じゃないですか」
「本当にびっくりしたわ。本当に何から何まで当時のまま再現されてるんだもの。間違って当時のVTRでも見ているのかと思ったわよ。まぁその頃にこの学園にカメラなんて無かったんだけどもね」
俺と美佐都さんの出会いは、親父と学園長との出会いと同じ?
何それ怖い!!
「自分が憧れて入った学園で、夢破れて再び心を閉ざす日々。そんな中、突然その憧れの物語が目の前で始まったの。美佐都は始めてこの話を聞いた頃の自分を思い出したのね。そして美佐都は変わったの。まぁ、まだあなたの前くらいでしかそこまで大差無いけど。それでも入学式の打上げから帰ってきた美佐都を見て驚いたわ。顔はいつも通りだけど鼻歌を歌って弾みながら歩いてるんだもの」
俺が変えたと言うのはそう言う事だったのか。
小さい頃から聞いていて、一度は壊れた心を繋ぎ止めていた憧れの物語。
その始まりが目の前で再現されたんだ。
変わる切っ掛けには十分すぎるだろう。
でも無表情で鼻歌歌いながら弾んで歩く美佐都さんを想像するとある意味ホラーだよな。
「でも、これって俺が変えたと言えるんでしょうか? たまたまだと思うんですよ。 偶然その物語に憧れてた女の子が、偶然通りかかった男の子と、偶然物語通りの展開になった。それだけで俺自体が何かした訳でもないですよ。それにその場に居たのが俺じゃなくても女の人を助ける為なら同じ事をしたと思いますよ?」
俺の言葉に目を瞑り小さく頷く学園長。
だけどその顔は『そうじゃない』と言っている様に見える。
「それはそうかもね。でもね偶然が三つも続くとそれは必然と言えるわ。しかも四つ目の偶然、あなたがその物語の主人公である牧野会長の息子であると言う事。それだけ揃えばこれはもう『運命』と言うのよ」
運命……? 俺と美佐都さんが会うのが運命だった?
「変わった美佐都を見て、直ぐに橙子ちゃんに調べて貰うように頼んだの。でも私の中ではある種確信めいた物が有ったのよ。もしかすると牧野会長の息子である牧野くんが変えたんじゃないかってね。そして橙子ちゃんの報告でやっぱりあなただったのを知って、直ぐに生徒会に入れて私達五人の原点である部活紹介写真を担当してもらうように頼んだの」
5人? 部活動写真から始まる5人と言うと、親父と学園長、それに創始者と後はお姉さん?
いや今までの学園長の話にはお姉さんは出てこなかった。
となると、それによって生まれた俺と美佐都さんの事か。
「あの最初は俺と会おうとしてなかったと聞いたんですが、何故なんでしょうか? 藤森先輩が創始者の目から逸らすと言っていましたが」
先程からの流れで創始者が引き裂いたのを悔やんでいたと言っていたので実はもう親父の事を怒っていないかなぁと少し期待しているんだけど。
「えぇ、そうね。御婆様はあなたが学園に入学する事を既に知っていたわ。だから監視の目が厳しい入学直後は接触しない様に距離をおこうとしたの。本当は直ぐにでも会いに行きたかったんだけどね」
「と言う事は、やっぱりまだ親父の事は許してないんですね」
ちょっと期待してたんだけどなぁ~。
と言うか俺が入学した事を既に知ってるのかぁ~。
「そうなのよ。私も御婆様が引き裂いた事を後悔してたから、てっきり牧野会長を許したのかと思って聞いてみたのよ。そしたらそれは私に別れの悲しさを与えたと言う事だけで、その原因の牧野会長は前よりも憎んでるっぽかったわね。どうも後悔は親族限定の慈悲みたいなものだったみたい」
マジか~、更に怒っているのか~。
遺していった大切な物の一つである親族限定と言うのは有る意味ブレないよな。
「ならなんで俺の入学を許したんでしょうか? そんなに憎んでるなら入学拒否とかしそうなんですが?」
その言葉に学園長は困った顔をして腕を組んでいる。
何やらこれにも理由があるようだ。
「それがね~、これも御爺様の遺言なんだけど『学園の門戸を叩く者を快く受け入れること』ってのが有ったらしいのよ。試験に合格したのならそれを拒む事は御婆様なら出来ないわ」
面倒臭せーーーー!!
本当に面倒臭せーーーー!!
ある意味本当にブレないよな創始者って。
「はぁ、そうですか。ならなんで俺をこんなに早く生徒会に引き入れて、しかも創始者の怒りの元凶である部活紹介を任せようとしたんですか?」
ここが一番分からない。
下手したら親父と学園長の二の舞どころか、怒りが増している今ならもっと酷い事になるんじゃないだろうか?
当事者だった学園長は創始者の恐ろしさを分かっている筈だ。
何故そんな危険を冒そうとしているのだろうか?
「これは賭けだったの。美佐都を変える運命の出会いを果たしたあなたが、今度はその元凶となった私と牧野会長の悲劇、そして御婆様を今でも苦しめている御爺様の遺した言葉までも変えてくれるんじゃないかってね。だから何も情報は与えない様に頼んで任せてみたのよ」
先程とは打って変わって真剣な表情で俺にそう言う学園長。
しかしそれは過大評価だろう。
ここでも賭けと言う言葉が出て来た。
それも乙女先輩達と同じく俺が勝つ方に賭けている。
そんなに期待されても、親父が出来なくて諦めた事を俺が出来るとは思えない。
しかも、親父と違って準備も何もないぶっつけ本番だ。
幾らなんでも分が悪い賭けじゃないのか?
「普通の写真を撮って来たらそこまで。あなたを引き上げた事の後始末で私は辞任でもするつもりだったわ。折角築いた御婆様との信頼を裏切った罰としてね」
そう言うと学園長がニッと笑った。
「そして私は賭けに勝ったのよ。あなたは昨日一日で全ての準備を整えたの。生徒達の信頼を曲がりなりにも勝ち取り、そして私と牧野会長が描いていた素晴らしい写真と、御爺様の志を汲み取ったかのようなインタビューを持ち帰った。極め付けはお母様の信頼ね。これは嬉しい誤算だったわ」
確かに昨日一日色々と大変だったけど、それが準備になるのだろうか?
写真とインタビューは確かにそうだけど、演説にしても理事長にしても解決自体はしていないじゃないか。
「生徒達の信頼って言われても、あれは暫定的なもので認められたと言える物じゃないですよ。藤森先輩に助けられたお陰ですし」
「あのね、あの劇的な場面で下級生が己の非力を認めて、更に自分達に力を貸して下さいとお願いされたのよ? それで力を貸さない先輩はそうは居ないわ。周りの同調圧力とかも有るしね」
そう言えば、思ったより先輩達からの嫌がらせや報復が無かったのには気になっていた。
あれだけ殺気立っていたのだから、何かされるのではないかと内心ビビッていたんだよ。
「あと橙子ちゃんは素直じゃないからね。一番感動していたのは橙子ちゃんだったと思うわよ? 拍手だって写真馬鹿のあの子が居なければ自分でしてたんじゃないかしら? だって昨日も目を輝かせてその時の様を私に力説してたもの。編集したDVDも大切そうに持って帰ったしね」
写真馬鹿って……萱島先輩可哀想。
しかし、乙女先輩、俺にはあんなに演説した事を怒っていたのに。
それに学園長DVD何枚コピーしたんですか。
これ以上撒き散らかさないでください。
キーンコーンカーンコーン
あっ昼休みの終わりの予鈴が鳴っている。
まだ聞きたい事が沢山有るのに……。
放課後もう一度来ようと思って、学園長にそう告げようと顔を見る。
「そしてこの演説が無かったら始まらなかったわ。……」
まだ喋るんかーーーい!
学園長……。話に熱中しすぎて予鈴聞こえてないのですか?
まぁある意味学園長公認のサボタージュって事で良いよね。
『やっぱりダメだったかぁ~。確か今日のレクリエーションってクラス委員を決めるんだったよなぁ~。変なのに勝手に決められてると嫌だなぁ~』なんて事を思いながら熱く語っている学園長の話に耳を傾けるのだった。
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