4-7土橋桂介の推理ショー
「まず、天城さんにお聞きしたい。昨日『ある団体から広告研究会が部室でタバコを吸っているようだと通報があってね』とおっしゃっていましたよね」
とりあえず俺の推理の
「うん、言ったよ。それがどうしたんだい?」
「その『ある団体』って、自転車競技部だったんじゃないですか?」
ガタッ。
俺の言葉に、俺を横目で見ていただけの香子がこちらを向いた音が聞こえた。どうやら香子にも見えてきたようだ。
「うん、その通りだよ。よくわかったね、土橋君」
天城さんは目を丸くして肯定した。
「なるほど、やっぱりそうですか」
これが正しいとなれば、俺の推理も正しいと自信がつく。
「う〜ん、土橋くん。イマイチ話がよく見えないんだけど……?」
水野さんは右に左に首を傾げて疑問符をばら
まあ聞いていなさい、俺の名推理を。
「俺の推理では、今回の連続盗難事件の犯人は、昨日の広告研究会の三人組です」
「えぇ〜⁉︎」
水野さんがナイスなリアクションをとってくれた。こういう人がいると喋りやすくて助かる。
「ふむ。それは、最初の被害団体が自転車競技部だったからかい?」
「えぇ、そうです。盗品のリストは見ましたか?」
「いや、見てないよ。囲碁部が碁石を盗まれたっていうことと、音楽部、児童文学研究会が部室を荒らされたってことくらいしか聞いてない。今回、実害を
そうか、いくら文化系団体のトップとはいえ、いや、だからこそ運動系の団体が相談に来るはずないよな。運動部常任委員会ってのがあるんだし。
というわけで、俺はさっき香子とまとめたノートを天城さんの事務机に広げた。
「じゃあ、これを見てください。不知火と水野さんも」
俺が
「最初の三件は嫌がらせ目的、以降は金品を得る目的みたいになってるような気がしませんか?」
俺は三人に問いかけてみる。
「なるほど。確かに最初の三件は整備をできなくさせたり、その競技に支障が出るような物が狙われているようだな」
「ふむふむ、なるほどね」
不知火と天城さんは納得のご様子。しかし、
「う〜ん、でも、スパイクとかタイヤとかサドルとかも、競技に支障が出るよね……?」
水野さんは妙に鋭いところがある。それについてもさっき香子と答えを出しているのだが、なんと天城さんが解説してくれた。
「歩美、よーく見てごらん。盗まれ方が違うんだよ。前三件は一種を多数、それ以降は露骨に現金だったり、換金しやすそうなものを一個ずつ盗まれてるでしょ。盗品を在庫商品として持っておく時間は短い方がいいからそうしたんだよ、きっと」
「あぁ〜、そういうことなんですね〜」
天城さんの丁寧な解説で、とりあえず水野さんも納得してくれたようだ。では、次に行こう。
「続けますね。ということは最初は
俺は我が物顔で、さっき香子が語った推理を披露した。
「はぁ……。桂介、ことことうるさいわよ。シチューじゃないんだから、もうちょっと上手く喋りなさい……」
なっ⁉︎ いや、確かに「こと」って言い過ぎた気がしたけども。まさかシチューに
「しかも、ここまではさっき私が話したことをそのまま言ってるだけじゃないの!」
あぁっ⁉︎ それはバラさないでくれよ……!
天城さんも不知火も水野さんも、噴き出しそうな顔で笑いをこらえている。
はぁ……。まあいいさ。ここから先は俺のオリジナルだからな。
「おっほん!」
数分ぶり二度目のわざとらしい咳払いで、俺はみんなを
「まあ、それでですね。なんでチャリを漕いでるだけの、って言ったら怒られそうですが、そんな自転車競技部が恨まれるのか。これを考えていたら、自転車競技部の隣の部室が空き部屋になっているのが気になりましてね。その部屋が広告研究会の部室だったってことを知って、それでピンときたわけですよ」
俺はトントンとこめかみ辺りを人差し指で叩いた。ちょっと気取りすぎた感はあるが、もうこの際だから気にしない。
「なるほどな。だからさっき天城さんに確認していたのか」
「そう。不知火の言う通り」
言いながら俺はビシッと不知火を指差す。
「そしたら案の定、自転車競技部が通報した団体だったわけだ。動機までバッチリあるんだ。これはもう広告研究会が犯人ってことで十中八九間違いないだろ」
…………。
え、何この空気。なんでこんな静まり返ってんの。もしかして、気取り過ぎて引かれたか?
「いや、土橋くん、それはわかったんだけど、なんで、あたしたちを集めたの……?」
水野さんの言葉に、天城さんと不知火もうんうんと
え、みんなわかってないの? マジ……? あぁ、だから静まり返ったのか。
じゃあ仕方ない。みなまで言わせてもらおう。
「天城さん、水野さん、不知火。俺と香子に協力してください。犯人を捕まえて、警察に突き出しましょう!」
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