エンジリウムの花を君に
佐久良
エリンジウムの花を君に
「実は、
たった今、僕の親友である
実は僕も彼女に片思いをしていた。
「私でよかったらお願いします」
たった今、一組のカップルが誕生した。めでたいようでめでたくない。そんな気持ちが僕の心の中をさまよっていた。彼は僕よりも勇気があって僕より先に告白した。だけど僕のほうが彼女のことを好きでいる自信はある。そんなのただの戯言。好きな人に彼氏が出来たら、親友に彼女が出来たら、その恋はあきらめられると思っていた。
親友の告白から約一週間。今日から僕も高校三年生の仲間入りである。いつもと変わらない制服と通学路。唯一変わったのはネクタイのラインの色が赤から青に変わったことくらい。そんな些細な変化だった。校舎のそばを彩る桜色のカーテンの中を通りながら校舎の敷地に足を踏み入れた。最初に目に付いたのは校舎入り口に群がるたくさんの生徒。その中には見覚えのある生徒たちもいた。
「あぁ、クラス替えか」
他のクラスメイトの名前になど目もくれず、ただ自分の名前だけを探し、足早に人混みの中から出た。一学年10クラスもある僕たちの学年に唯一の親友と呼べる
「三年連続で同じクラス、しかもまた隣の席ってすごい偶然だよね、私たち」
うつむいていた僕の頭上から聞こえる声にすぐに反応してしまった。
「おはよ、
いつもと変わらない制服、いつも通りのポニーテール、いつもと変わらない僕が抱く恋心。唯一変わったのは
「ん?まだ寝ぼけてるのかな??」
「い、いや起きてるし、、、、。おはよ」
「うん、おはよ!」
心苦しいが僕は少しそっけなく返した。彼女もすぐにその変化に気づき少し笑みを見せる。
「いいんだよ気にしなくて。私に彼氏が出来ただけ、、、」
こっそりと僕の耳元でそう囁く。そっちが良くてもこっちが良くない。
「別に前と変わってないし、、、」
「いや、明らかに変わってるじゃん。前はちゃんと目見て話してくれてたのにな~」
僕の変化はそんなにわかりやすいのか。
「いつも通りお話しようよ。私たち友達でしょ?」
『友達』。その単語を聞いて自分の中で少しあきらめがついた。
「わかったよ、、、」
「うん、それでよし!今年もよろしくね」
今年で最後の高校生活。受験勉強が大変な学年だが、親友のいないこの僕はこのままだとボッチ確定である。高校生活三年間、華のある学生生活だったと言えるように他のクラスメイトに話しかけてみようじゃないか。僕は行動に移すことをここに決意した。
『悲報、ボッチ確定』
僕がもしテレビ番組の制作スタッフだったらこのテロップを入れるだろう。完全に乗り遅れた。クラスメイトに話しかけようと行動に移そうとしたがグループの輪に入れず、気づけば独り教室で座りながら小説を読んでいた。そんな僕を見て声をかけてくれたのは隣の席の
「クラスの人たちとお話しないの??」
「しないんじゃない、できないんだよ」
僕は決して群れを嫌う一匹狼ではない。本当は話したり、遊んだりしたい。僕だって青春を送りたいのだ。
「あら、可愛そうに、、、」
「そういう
「私はもう友達出来たよ」
余裕の表情である。ボッチである僕への勝ち誇った顔。少しむかついた。
「でも、、、、」
「でも?」
彼女は少し浮かない表情を見せた。
「みんなスマホ見てばっかだからなんかつまんない」
そうだ、彼女は現代社会の中においての絶滅危惧種、ガラケーの使い手である。別にガラケーを馬鹿にしているわけではない。携帯端末を持ってない僕はガラケーを馬鹿にする権利すら無いのだ。僕の場合はそれも波に乗れない原因なのかもしれない。そのうえそこまでコミュニケーション力があるわけではない。つまりスマホを持ってない彼女に友達が出来ると言うのは僕からしたらすごいことだ。
「なんだ、そんなことか、、、」
「そんなことかって、、、。結構重要な問題だよ??」
「ガラケーすら持ってない僕はどうしたらいいんだよ」
「それじゃあ、私とお話ししよ」
そんな
「わかったよ」
読みかけの小説を閉じて彼女のほうを向いた。
「よかった、やっとこっち向いた」
頬杖をついた彼女はこっちを見ていた。
「なんか懐かしいねこの感じ」
「確かに」
『いらっしゃい僕の青春、そしておかえり僕の恋心。』
その日から僕は
昨日の友は今日の敵ってね。
END
エンジリウムの花を君に 佐久良 @-ryo-99
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