第20話 不倶戴天

バタンッ


「お兄様!帰っているのですか!」


扉が開き、雪華が帰ってきた。


ドタドタ


「・・・?!魔女がいる事もおかしいですが、何故魔物が居るのですか???どう言う状況ですか???」


雪華があ然とした様子で、叫ぶ。


「魔物め、お兄様から離れなさい。調伏しますよ!」


シャンッ


雪華が身の丈程ある矛を構える。


「落ち着いて、雪華ちゃん──」


「魔女は黙ってて!」


明菜を、雪華が遮る。

なら・・・


「あのな・・・雪華──」


「お兄様は黙ってて下さい!」


俺も駄目なの?!


「それでしたら、私めが──」


「何で魔物に発言権があると思ったの??!」


犬まで、雪華に封殺される。

詰んだ。


「いや、雪華、話し合おう。今日は、その為に来たんだ」


「お兄様の家は此処ですよ?!来たとか、おかしいです!」


ぬう・・・話が進まない。


「とりあえず、落ち着け。その、雪華の厨ニを──」


「私は高校1年です!」


雪華が距離を取り、構えると、


「招来、白蛇しらへびよ!汝、万難を排する存在もの!」


ボウッ


しめ縄を巻いた白蛇が、頭をもたげた状態で現れる。


白蛇しらへび、魔物と魔女を抑えて!」


カッ


白蛇の目が光る・・・


ぞわっ


昨日、夜の蜘蛛を見た時のような・・・寒気が体を支配する。

やばい・・・


ひたり・・・


犬が、ゆっくり進み出る。

犬が低く、告げる。


「導く存在ものよ。我は主命により、小さき命を護る。此処は引け。さもなくば、我ら、相対するは逃れられぬ」


蛇が告げる。


「八方を護る存在ものよ。そなたこそ、引け。我が主に慈悲は無い。その魔に手を染めし娘は、生かしてはおけぬ」


ん・・・?

犬が、苦しそうに呻く・・・


「そなた・・・分かっているのか・・・?我らが戦えば・・・この星は焦土と化すは必定。彼等が護りしこの地、失うは望むまい・・・?」


んん・・・?

蛇が応える。


「ぬう・・・もはや、問答は無用。我が主が大願と、ヌシが宿命さだめ、もはや相容れぬ。ゆくぞ・・・」


蛇が大口を開け──


「「「良い訳無いだろ(でしょ)(わ)」」」


俺、明菜、雪華の叫びがハモる。


「「ですよね」」


犬と蛇が頷いた。


--


話がややこしくなったので、仕切り直し。

とりあえず休戦となった。


「・・・何故魔物、と思ったら、まさか八幡やわたが来るなんて・・・暇なの?」


雪華がぶつぶつ言っている。


「それより雪華。今後の話だ。俺には明菜と言う彼女がいるし、お前は妹だ。だからその・・・お前と俺が結婚する事は有り得ない分かって・・・くれるな?」


雪華は溜息をつくと、


「魔女が、私を遠ざける為の偽装彼女、というのは分かっています。そうですね・・・分かりました。お兄様が記憶さえ取り戻せば、きっと上手くいくんです」


何故そう自信満々なのか。

偽装彼女のくだりとか、正解なんだけど。


「ん・・・解決した、のかな?」


明菜がほっとした様に言う。


「魔女、お兄様に陰陽を教えたのですね?」


雪華が、明菜に言う。

陰陽?

確か、明菜の父親も似た事を言ってたな。


「ええ、教えたわよ?」


明菜が小首を傾げる。

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