第9話世界樹の葉の偽物出回る(バハムート歴2018年9月20日)

 エルフの村の特産品である、世界樹。高さは数十メートル、大きいものだと百メートルを超える、まさに木の王様と言える品種である。育成が難しく、高い技術も必要な為、100年以上修行を積んだ熟練の職人にしか育成は不可能であり、近年魔法大学でも世界樹の育成法に関して研究を行っているが、未だ1メートル以上大きくすることに成功していない。


 世界樹は、非常に高度な管理が必要ではあるが、葉の先端から根の先っちょまで全て有用な素材となる。特に、新芽や実などはとりわけ効果が高く、重病や奇病まで治療できる薬の原料にもなっている。


 貴重な世界樹の素材の中では、比較的多く収穫できるのが葉っぱであり、世界樹の葉はエルフたちの工芸品と並んで外貨を稼ぐ重要な交易品となっている。




 今回、その世界樹の葉の偽物が薬剤ギルドで大量に見つかった。


 世界樹は巨大な木だが、その葉は手のひらよりも少し大きいサイズで、素人では判別できないこともある。毎年、偽世界樹の葉に騙される者は一定数いた。しかし、今回はギルドが把握している数で3000枚以上、被害総額は3億ゴールドを越えると予想されている。




 この事件に関しては、現在ギルドは調査中とコメントしており、偽物を見つけたらすぐに薬剤ギルドまで知らせるようにして欲しいとしている。




 エルフたちも、今回の件に関しては、世界樹、ひいては我々エルフたちに対する冒涜として、偽物を流通させている組織の捕縛に全力で立ち向かう意向を示している。




裏解説




 今回の世界樹の葉の偽物に関して専門家は、見た目は非常によく似ており、薬効も似ているそうだ。しかも、どこにでも生える木で、ちゃんと育てれば3年程度で葉を収穫できるらしい。


 その為、大量に在庫を保有する薬剤ギルド、世界樹の葉で稼いできたエルフ達はこの葉が世界的に流通してしまうと、いろいろと大人の事情で困るので、無かったことにしようと躍起になっているそうだ。


 薬効の高い薬が低価格で手に入る日は近いかもしれない。

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