極楽変-Utopia Screen-
蔵持宗司
プロローグ 百周年目の人工知能
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人工知能という物がこの世に生まれ落ちてから、今年で丁度百年になるそうだ。
何をもって知性と定義するかの判断基準はまずこの一世紀の間、議論に議論が重ねられた。次に恐ろしいほど難解な数式の果てに「よくわからない」という結論を出すだけの論文が四桁近くにまで積み上げられ、さらにその果てには、ヒトの技術は人間と寸分違わぬ反応を返すソフトウェアを開発するまでに至った。
けれどもどう解析してもその技術とそれまでの既存品の間には明確なブレイクスルーなどは存在せず、困り果てた哲学者と人類学者と情報工学研究者は、揃って一世紀前の結論に逆戻りすることを選んだ。
すなわち人の手に触れずとも「知的」活動を行えるものは、人工の知性を有していると。
一九六一年のデイジー・ベルからちょうど百年。
チューリングテストとハイデガーに対する自発的回答という曖昧な基準を元に、人類以外の知性が社会の枠組みへと取り入れられた。
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