異世界の公設秘書 ≪ デテレントの調律師 ≫
北山 歩
第1話 エピローグ
「はぁ、今回の業務は予想以上に大変だった」とため息混じりに、ハイエースを運転している私は数奇な運命に
私は、環境調査企業に務め、風力発電の建設に必要な風況調査や積雪が何メートルかを雪尺で計測したり、飛行場の騒音測定等を行っている調査員です。
今回の業務は、新潟県沖合に建設予定の洋上風力発電プロジェクトで必要となる風況調査。
いつもより大規模なプロジェクトであり、夜は新潟の旨い魚、特にマグロのカマを堪能でき、自分でも驚くほどの『集中力』を持って取り組めた業務であったため、満足しながら帰路であります。
車内の時刻を見ると19:00。当然あたりは暗く、単調な道路の景色と仕事疲れもあって、『あくび』も大きくなり本格的に眠気が出る始末。
『このままでは事故を発生してしまう』と思い、ラジオをつけ眠気を解消することにしました。
とりあえず、眠気解消が目的なので、ハードな音楽が流れている局を選択、曲のタイトルはわかりませんが、眠気を解消できるので良しとしました。
曲と曲との間でニュースが流れ内容に耳を傾けると、2ヶ月前から多発している地震についての情報であり、仕事がら断層の『ずれ』に起因しているんだようなと思いながら、走行を続けていました。
しばらく走行していると前方に関越トンネルが見えてきたので『トンネルを抜けたら、その先にある谷川岳パーキングエリアで仮眠していこう』と考えながら、関越トンネルに入った矢先。
ラジオより、”タータン” ”タータン”
「緊急地震速報です。群馬県沼田市で地震が発生しました。あと数秒で大きな揺れが発生します。」
との放送が流れてきました。
大急ぎで車を
”グラン グラン”とハイエースが大きく揺れる地震が発生。私は即座に調査で使用していた
私もだてに地震大国、日本で40年生きてきたわけではないと自分自身を鼓舞していると、目の前が眩しい紫色に染まり、あまりに眩しい光で網膜を痛めたのか、景色が幾重にも重なって見え始めました。
『いつもの地震と違うな、それにプライマリ波が来てから10秒以上経過しているのにセカンダリー波が発生しないなんて。変だ、そんなに巨大な地震なのか。』と考えていると、頭の中に直接「…えが…大戦を…い…た。」という言葉が聞こえてきました。
地震の揺れがなくなったことで、この奇妙な景色と幻聴はなくなり、私はかつて購入した脳卒中を予防する書籍の中で「目に閃光が見えた際は脳梗塞の初期症状の可能性が高い」と書いてあったことを思い出し、幻聴まで聞こえたことから、脳梗塞になったではないかと『マイナス思考』になり、明日は有給休暇をとって外科の診察を受けることを決めました。
この世の中、命より大事な業務はありませんからね。
明日朝に『「有給休暇を取得します。」との電話連絡を行いたくないな』と考え、スマホのメールアプリに「明日、有給休暇を取得します。」との内容を入力しすばやく送信。
何事も準備が肝心です。
揺れも鎮まったので運転を再開し、パーキングエリアで休息を『たっぷり』とった後、3時間かけなんとか帰宅しました。
自宅に戻って落ち着いたこともあり、地震の際に見た奇妙な景色と幻聴、さらに一瞬だけラジオのMCの声が…男性から女性に変わっていたな…と思いながらも
”グラン グラン”。
地震じゃないよねと薄れゆく意識の中で思いながらも眠気に勝てず深い眠りに入り就寝しました。
翌日、なぜか、昨日スマホにて『有給休暇を取得する旨のメール』を送信したにもかかわらず、自宅のチャイムが連呼され起床。
あまりのしつこさにドアモニター越しで相手を確認すると、見たこともない黒のスーツを着こなした
この男、朝からご近所迷惑も考えず大きな声で
「加藤秘書、自宅に戻られていることは分かっています。昨日、
私は面倒事には関わらないポリシーであるため、早急に誤解を解いて束の間の安息を得るべく
「誰かと人違いをしていると思いますよ。ご近所迷惑なので大声は止めてください。」
とドアモニターを使用し返事を行うと、青年は呆れた表情となり
「加藤公設第一秘書も、もう結構なお年なのですから、さっさと出てきてください。」
あまりにも大きな声であるため、私は観念し私服でドアの外に出た瞬間。
壮年の男は一言。
「確保…」
ドアモニターに映らないよう潜んでいた黒ずくめの男2人に腕を掴まれ、私は乱暴にクラウンに乗せられます。
驚いた顔をしているであろう私にむかい、壮年の男は哀れんだ顔で
「これから大臣と打ち合わせなのに、随分カジュアルな服装ですね。まぁ、私は加藤秘書のそういうところ嫌いじゃないですよ。」
あとから分かりましたが、この壮年の男は名を『藤間』と言い、籠手田大臣、私とともに第三次大戦を防止するために、奮闘する仲間なのですが…。
このときの私は拉致されたことに呆然となり、「なるようにしかならないな」と思いながら、この状況に身を任せておりました。
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