第2話〖フェルディナンド・マゼラン提督〗

⛵Opera ❴La Era de los Descubrimientos❵⚓


………………………ユリウス歴1518年9月20日………。


バルセロナ港に着いたミンニ・ロッサは、三人で落ち合う約束の場所である旅籠屋に向かった。


すると、旅籠屋はたごやの近くで懐かしい姿を発見した。

その男は横を向いていた。

誰かと話している様子であった。


鼻高く、貴族風の整った顔立ちで、短い髪。

中背痩せ形で優しそうな表情が特徴的な男。


彼こそ、ミンニ・ロッサの友人、アントニオ・ピガフェッタであった。


ミンニ・ロッサ🐭👒『ピガフェッタさん!!

お久し振り!』


ピガフェッタ「あっ!!

ミンニさん!

お久しぶりですね!」


ミンニ・ロッサとピガフェッタは互いに歩み寄り、抱き締め合った。


その時、両者は頬と頬をピッタリと付け、ミンニ・ロッサはキスの音のみを鳴らした。

【※】


ミンニ・ロッサ🐭👒『逢いたかったわ』


ピガフェッタ「私もです」


その時、近くで“ジャリッ”とした音がした。

地面をブーツ👢で踏みつけた時にする音であった。


何者かが二人の近くに近付いて来たのだ。


ミンニ・ロッサは音のした方を向いた。

そこには、非常に大きいブーツがあった。

明らかに通常のサイズではなかった。


❪何かしら………これ………………❫


ミンニ・ロッサが徐々に目線を上げて行くと、人の脚の様な物が見えてきた。


それは、まるでギリシャ神話に登場するケンタウロスの様な、長く逞しく美しい形で、芸術作品の彫刻と見間違えても何らおかしくない程立派な脚であった。


その上の胴体はというと、今度はやや短めであった。


しかし、胸の筋肉はギリシャ神話に登場するポセイドンの様に分厚く、腹部も確りと引き締まっていた。


横の腕は、脚と同じくとても長く、しかも鍛えぬかれた筋肉で盛り上がっており、やたらと太かった。


それはまるで、ギリシャ神話に登場するミノタウロスの様に、神々しいばかりの形になっていた。


男から見てすら惚れる様な、素晴らしい筋肉美である。


そして、その者は全身黒ずくめの服装をしていた。


しかし、黒服がその体つきに本当によく似合っており、見る者の心を一瞬で掴んで離さなかった。


その中で二点違う色の物があった。

紫色の天鵞絨外套ビロードマントと、白い手袋である。

美しく、誇り高く、それでいて誠実な印象を醸し出している。


❪まっまさか………………❫


ミンニ・ロッサが更にその上を見上げると、黒色だが、まるでサンタクロースの様な立派な長髭を生やした男がいた。


物凄い長身である。

その男の身長は2メートルを楽に超している様であった。

しかも、凄まじい筋肉質である。


その男の顔は、小顔で上品に引き締まっており、鼻もバランス良い高さで、外見的にも知性の高さを感じ取れた。


頭に品の良い提督帽🎩を被っていて、

またそれが良く似合っているのであった。


しかしその提督帽は、小顔の割に大きいサイズであった。


目は、まるで七つの海を見てきたかの如く透き通った紫色の瞳で、宝石の目とも言えそうなくらい輝きを放っていた。


そしてその全身から、何やら気の様な物が発せられている。


大海原の厳しさの中に慈愛の精神に満ち溢れた………………そんな気を発している印象が確かにあった。


この者をじっと見ていると、聖なる力によって吸い込まれてしまいそうな、そんな雰囲気を醸し出していた。


❪何処の国の王様かしら………………

え………まさかまさか!


この方が………………マゼラン閣下?!

何て………………………何て素敵な殿方なのかしら………………………!!!!!❫


その男はニコリとしながらミンニ・ロッサに挨拶をしてきた。


マゼラン🎩『御初に御目にかかります。

ミンニ・ロッサ・トポリーナ提督。

私が、フェルディナンド・マゼランです!』

【※】


マゼランの声は、どんな古典西洋音楽【クラシック】の名曲よりも遥かに耳当たりの良い、素晴らしい紳士的美声であった。


ミンニ・ロッサの瞳孔が思わず開いた。


ミンニ・ロッサ🐭👒『あっあっあ………………』


ミンニ・ロッサは動揺を隠しながらスカートの両端を手で掴み、上に持ち上げながらペコリと御辞儀をし、挨拶した。


ミンニ・ロッサ🐭👒『Muito prazer em conhecê-la!《ムィント プラッゼール エィン コニェッセーラ!》(初めまして!)


御初に御目にかかりますわ、マゼラン伯フェルディナンド閣下。

ミンニ・ロッサ・トポリーナです。


私の我儘を聞いて頂き、誠に恐縮です。

本当にありがとうございます。

お会い出来て光栄ですわ。

閣下』


マゼラン🎩『ほう………。

貴女はポルトガル語も御上手ですな。

ピガフェッタから聞いた通り』


ミンニ・ロッサ🐭👒『まあ!

ピガフェッタさんが何か話したのかしら?』


ミンニ・ロッサは面白そうな顔でピガフェッタを見ると、ピガフェッタは微笑んでいた。


マゼラン🎩『さあ、立ち話も何ですからそこに入って軽く飲みながら御話をしませんか?』


マゼランは旅籠屋の中のバルを指して促した。

バルの店名は、❮GALAXIA❯(銀河)であった。


ミンニ・ロッサ🐭👒『良いですわ。

中で是非、閣下のお話をお聞かせ下さいませ』


三人はマゼランを先頭に店に入ろうとした。

その時であった。


マゼランが提督帽🎩を手に取り脱ぐと、束まったマゼランの髪の毛がバサッと広がった。

マゼランは長髪であった。


❪!!!!!!!!!!❫


マゼラン『おっと、これは失敬!

驚かせてしまいましたかな』


ミンニ・ロッサ🐭👒『閣下は長髪を帽子の中に束ねて入れてらしたのね!

道理で大きい提督帽だと思いましたわ(笑)』


ミンニ・ロッサはハッとした。

マゼランの髪が広がると、清々しい果汁の様な香りが辺り一面を被った。


それは、旬の頃の葡萄畑の様な、思わず嫌な事を全て忘れてしまう、そんな奥行のある果物の芳香であった。


嗅いでいるだけで呼吸が楽になりそうな、そんな香りがスッ………………………と放たれた。


ミンニ・ロッサ🐭👒『何て良い香りかしら(クンクン)………………まるで葡萄園みたい!!

閣下は、髪に香水か何かを付けてらっしゃいますか?』


マゼラン『ふふ………………どうですかな?』


店の中は、水夫や旅人御用達の店らしく立ち飲み用のテーブルが多かったが、僅かに座れる席も存在していた。


マゼラン『貴女から御先にどうぞ。

ミンニ提督』


ミンニロッサ🐭👒『ありがとうございます、閣下』


マゼランはミンニ・ロッサを上座に座らせた。


三人がテーブルに着くと同時に、マゼランは笑顔で言った。


マゼラン『ミンニ提督。

御好みは御座いますかな?

また、食べられない物が有れば遠慮なく仰って下さい』


ミンニ・ロッサ🐭👒『いえ、閣下とピガフェッタさんに合わせますわ。

偏食はしませんし、イスパニア料理にあまり詳しくありませんの。


折角バルセロナまで来たんですもの。

此方の郷土料理を頂きたいですわ』


マゼラン『承知しました。

ミンニ提督、貴女はお酒も飲めますかな?』


ミンニ・ロッサ🐭👒『勿論ですわ。

飲めねば船乗りは務まりませんもの(笑)』


マゼラン『それは良かった。

この地方の特産酒を出させましょう』


マゼランはピガフェッタと少しだけ相談し、決めてから店員に注文した。


出てきた物は、イスパニア特産のヘレス🍷【シェリー酒】、ハモン・セラーノ【生ハム】、ケソ【チーズ】、豆煮込み、そしてオリーブの実等であった。


マゼラン『それでは素敵な出会いに乾杯しましょう』


¡Arriba, abajo, al centro, pa'dentro!

(上に、下に、真ん中に、腹の中に!)


     ¡Salud!(乾杯!)


三人は乾杯し、ヘレスを飲んだ。


ミンニ・ロッサ🐭👒『薫りも良く、風味豊かで美味しいですわ。

これはイスパニアの葡萄酒かしら?』


マゼラン『御気に召された様ですな。

此方はヘレスといって、救世主御誕生前1100年ごろにフェニシア人によってヘラという町にぶどうの樹がもたらされてから生産が始まったのです』


ミンニ・ロッサ🐭👒『ヘレス………。

名称も素敵な葡萄酒ですわね』


ピガフェッタ「マゼラン提督は大のヘレス通で、航海の際には、船に必ず大量のヘレスを積載してるんですよ」


ミンニ・ロッサ🐭👒『まあ!

意外ですわね!

閣下は酒豪でらっしゃいましたか?』


マゼラン『ハッハッハッハ。

実はヘレスは酔い易く覚め易いので、司令官が飲んでも影響は殆どありません。


飲んだ後の状況判断等、容易(たやす)いものです』


ミンニ・ロッサ🐭👒『(!)まあ!

そうでしたの!

それはもっと早く知りたかったわ(笑)』


三人はシェリー酒と供に酒の肴を食べた。


ミンニ・ロッサ🐭👒『美味しい!

これはイケますわね!

イスパニアの方々はいつもこの様な物を召し上がっているのかしら?』

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キャプテン・ミニー外伝Ⅲ マゼラン艦隊航海記 ❰あん時のpigafetta❱ Pigafetta @rikiya

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