2:31

2:30の続き


 僕が学園のアイドル(自称名探偵)を好きになったきっかけは、登校時も下校時も同じ電車になったからだ。


 彼女はいつも窓から外の景色を眺めていた。

 変わりばえのしない、当たり前の景色を、黄昏れながら、綺麗な瞳で……。


 彼女の助手になって、ようやくその理由がわかった。


「同じような景色でも月日が経てばね、ほんのわずかな変化があるものよ。それを見つけるのが名探偵の証よ」


 ある日の下校時、変化を見つけた彼女は、いきなり途中下車する。

 助手である僕も慌てて後を追いかける。


 彼女の目的地は、新装開店したクレープ屋だった。

「仕方がない、甘党の助手君に付き合ってあげるか……」


 名探偵ゆえ、アリバイは完璧だった。


「晩ご飯が食べられなくなるから、一個を半分ずつ、当然割り勘ね」


 手で割ると思いきや、名探偵は、かわいく口を開けてかぶりつき

「はい! 半分ね!」

 クリームの少ない下の部分を僕に差し出した。


 これは、何かの進展なのだろうか?


 僕はハチミツより甘い蜜がかかったクレープを、大きく口を開けて一気にかぶりついた。

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