画面越しの君に僕の声は届かない
坂本 由海
序章 あなたの声が僕を揺らす
「あなたの声が好きです。」
この一言を伝えられたら、どんなに嬉しいだろうか。
形のない対象への恋は、恋と言えるのだろうか。
ある日の夕方、斉藤ユウはいつものように、部屋でアニメを見ていた。
「私、あなたのことが好きみたい。」
テレビから流れてきたその一言が、まるで自分に投げかけられたように、ユウは自分の胸の高鳴りを感じていた。
カーテンを閉め切った真っ暗な部屋に、テレビの光だけが存在感を露わにしている。
テレビの光に照らし出されているユウは、ただテレビの画面を凝視することしかできなかった。
テレビの映像がスローモーションのような動きになり、ユウの目は必死のその声の主を追っていた。
ユウの視線の先には、4月から始まったテレビアニメ「アリス学園の議事録」の主人公・桜宮葵(さくらみや あおい)が大きく映し出されている。
桜の木の下で、散りゆく花びらと共に黒髪の長髪が揺れている。
ユウは、自分の心の中のざわめきの正体が何か、はっきりと分かった。
この声に恋をした、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます