俺にもゲームを語らせろ

江戸川台ルーペ

序文

 好きなゲームについて熱く語っている文章が好きだ。以前、真性引き篭もりというブログで、僕自身はやった事も画面も見た事がないゲームについて、それはもう尋常ではない愛情と熱量をもって語っていたのを読んで、

「ほへぇ、それはすごい、ほほう、スゴイね、ウンウン」

 と全部読んでしまった事がある。見た事も聞いた事も、やった事もないゲームにも関わらず、そのひたすらな愛に打たれて読んでしまったのだ。


 特に印象深いのは、「これじゃいけない、このままこのゲームに溺れて、無為な1日を過ごし続ける訳にはいかない」と引き篭もり生活を続けるブログ主の男性が遂に一大決心してアンインストールしたにも関わらず、甘美な誘惑に負けてAmazonで何度も何度もそのゲームをポチってしまい、その度にパッケージ版に付属するキーコード(遊ぶ為に必要なコード)を噛み砕くという所業を繰り返してしまうところだ。物理的に噛み砕くって愛と憎しみが深そうでスゴイ。普通、飴とか氷だって噛み砕いたりしない。(っていうかよく考えたらゲームの中身関係ないな)。


 名前を思い出した、ブログに命を掛けていたハンカクエイスウさんだ。完璧にあっち側の領域に足を踏み入れた人で、ある日突然引き篭もり生活を書き綴る陰鬱なブログを閉鎖して、それ以来顔を見てない。でも、僕はもしその人が匿名で文章を書いていたとしても、「これ書いたの絶対ハンカクエイスウさんだ!」ってわかる。僕は彼の熱心なファンだったのだ。きっともう死んでいるだろう。十年以上前の話だ。


 ああいう風に、好きな物について、圧倒的な偏見と偏愛に満ちた文章が書ければいいなあ、と思う。フラットな文章はプロの物書きにお任せして、偏りが深い、面白おかしい文章で、だれかの興味を引くような文章を書きたい。


 でも本当に好きなものについて僕がひたむきに文章を書いて、

「お前はにわかだ! 甘い、中学生の初恋くらい甘い!」

 と指を差し向けられる事にはまあ耐えられても、

「本当に好きなの?」

 と、真顔で聞かれたら、僕は正気でいられるだろうか?

「いまいちこの程度の文章からじゃ『好き』が伝わってこないんだけど」

 何て、どっかの大学のラグビー部の監督みたいな奴に言われたら、そしてその隣で「そうでござーっすね」等とデビ夫人が追い打ちを掛けてきたら、僕は正気を保っていられるだろうか?


「書かなきゃ意味ないよ」

 という声が聞こえる。書かなきゃ意味がないのは、その通りだ。


 ここはインターネットで、カクヨムで、真っ白な画面がこのiPad上に広がっている。ここにどんな文章を書こうが、どんな嘘を書こうが、僕の自由だ。とても広々とした気分になる。自由は良い。お金の次くらいに良い(突然ゲスい事を言う)。


 好きな映画について語る場所があるので、ゲームについても語る場所を作ろうと思いました。時々僕は格好つけて良い文章を書こうとするので、初心を表明しておきたいと思い、序文として残して置く事にした。気になるタイトルがあれば、読んでいただけると嬉しいです。


 どうぞよろしくお願い申し上げます。




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