氷のような美少女との出逢い 前編
ルティーヤ
序章
Going my home 〜奇襲〜
入学の季節である、春の夕方の帰り。
俺の名前は水谷潤也。
俺は田舎から東京に引っ越ししてから一ヶ月が過ぎようとしていた。様々な建物が並ぶ都市と入り組む電車の路線。ダンジョンのような感じで人に聞かないと分からないくらい慣れていない。
『東京に引っ越してから一ヶ月過ぎようとしてるんだ。人に聞くなんてダサいな……。早く東京に慣れないと……』と思う。
能力学校がある新宿をJR山手線で秋葉原駅のホームに到着して、改札口を出た。夕焼けの雲が綺麗で見とれていた。そその中に、ふと目に入ったのはなんと、高い建物の屋上に座っている人影が見えた。よく見ると肌白く、服はライトブルーのワンピースを着ている小さな少女だった。
『最近疲れてるから見えるのかな』と思ったが、本当に美しくまるで氷の妖精に見えてしまうほど。
その少女は夕焼けを見ているがこちらに気づいたらしく、立って見つめる。風でワンピースと髪がなびき、とても可愛さがある。
その光景を見てもっと見ようと目を細めると夕日でキラキラと輝く何かが見えた。そして輝いたものが勢いよく飛んできて反射的に避けて飛んできた物体をみたら驚きが隠せなかった。
その正体は氷でできた槍が建物の壁に突き刺さっていた。明らかに思った。
(少女は明らかに俺を狙っている……)
周りの一般市民が何事かと思って音のした方向を見るとみんな驚いた表情で逃げているそれもそのはず。なぜなら掠りもしていないのに、右肩あたりに凍傷のような傷があるからだ。更には突き刺さった部分が広がるように凍り尽くされている。
危険と判断した周りの一般市民は騒ぎならが押し合い圧し合い色んな場所へ逃げていく。
早足でその場を離れようとする。然し、彼女の方も追いかけてくる。俺は武器という物を持っていない。距離が縮んでいく。更に足を速めて、離れようとする。何故か空気がひんやりとしていく。まるで洞窟にでもいるかのように……。
人混みの中に紛れてどんどん離れようとしたが、
今度は全速力で走って行く。人混みを掻き分けながら駅へと急ぐ。そして、ICカードを使って秋葉原の改札口に入りホームへ、すると上野・池袋行の電車が丁度よく止まっていた。その電車に乗り込んだ。彼女は直ぐそこまで来ていて、俺を掴もうとしたのかドアが締まり腕を挟む。彼女はその痛さのあまり泣き叫ぶ。彼女は、腕を引き抜こうとしたが時は既に遅し、電車はそのまま出発してしまった。
彼女は電車と共に運ばれていって、遂にはフェンスにぶつかり、挟まった所から千切れて、腕だけ置いていく。
『何だったんだ? 今のは……』と思い少しだけ思い、安心する俺。
そこで有り得ない現象が起きた。
「え?」
思わず声を出してしまったようだ。彼女の千切れた腕が、まだ動いている。とても気味が悪い。数秒後には動かなくなった。 凍って水蒸気になっていく。
『周りの人には見えてないのか? 可笑しいすぎるだろ』
なぜなら、皆が見向きもしないあの美少女。俺は、少しだけ気持ちを更に落ち着かせて、秋葉原に行こうと
そして、駅に着いた。降りる。
その時、何かが起きた。
その駅の方で悲鳴が聞こえる。誰かが「救急車を呼べ!!
あと応急処置ができる人はいないか!!」と叫んだ。何かと気になり、駅を降りて声のした方へ向かう。そこで目にしたものとは……
人が倒れている。血も大量に出て血溜まりができていた。俺が見えるものは人に突き刺さっている氷柱のようなもの。まさかと思った俺は辺りを見渡して、蛇に睨まれた蛙のように身動き一つしなかった。
「……っ!?」
襲ってきた美少女本人。千切れた腕は再生さして、まさにトカゲの如く。泣き顔も美しく、寄って慰めたいけど氷柱のような凶器を持っていたために、近寄ることもしない。そして、氷柱のようなものを投げようとしていた。秋葉原にいて投げたのスレスレではなく、を完全に刺そうとしている。更に、異様な脳波及び周波数を捉えた。人間が絶対に出してはいけないもの。それは「殺意」。ありとあらゆる動物たちを殺すことのできる意思を今、感じてしまった。
「こんなことして何になる?」
落ち着いて返したが、時は既に遅し。投げる。風を切ってこちらに向かってきた。避ける。冷たさと痛さが混じってなんとも言えない状態。頬を掠り、切り傷のような傷ができて血が垂れるが、そんなことは気にしていられない。
殺気が前よりも強なって、動けなかった身体も動くようになり、また電車へと駆け込み、息を切らして、開閉ドアに寄りかかり恐怖に怯えた表情で安心する。が、何かが貫いた音がした。乗客の人は驚いて周りを見渡している。音をした方向に目を向けると、乗った扉側に氷柱のような物が突き刺さっていた。俺の右腕を貫いて。血も何も出なかったが、氷のせいで凍傷を超える傷ができてしまった。
駅に着いたら、彼女が微笑んで笑っていた。扉が開くと貫通したところから折れて数センチのみしか、残っていない。それを彼女は掴んで引っこ抜くが、根元から凍っているので、抜くには相当な力が──
「……っ!!」
俺は痛さのあまりにも叫び声があげることができず、物凄い痛そうな表情しかできない。汗のようなものが腕に伝って、指先から落ちる。貫いた腕が脈打つごとに痛みが走ったから、見ると血が出てきて指先の下は血溜まりができていた。乗客は非常通報装置を使って、乗務員と今のことを話している。乗客の中には質問してくる人が現れる。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫じゃありません。意識が遠のいて…… 」そう言ってドアに寄りかかって、座り込む。
「大丈夫ですから頑張って下さい!!」
一人の乗客は必死に応急処置をして、俺の意識が遠のかないように対応してる。
「言い忘れてた。皆さんは次の駅で降りてください。全員です……。ほかの車両に言って避難させてください……。ここは危険です……」
言い忘れたことを言って、俺の言葉でみんなは訳が分からなくなっている。
「見た人はいるかもしれません。前の駅で人が死んでいたのを……」
この一言で乗客のこの車両にいた人たち全員がざわつき始めて、不思議そうに見つめる人もいれば引く人もいたが、応急処置をしている人は何かが違った。
「分かりました、あなたの意見に賛成します。実は私も何かがおかしいと思ってました」
「見えてたんですか……?」少しだけ希望の光に満ちてそう聞くと
「違いますよ。何かを感じただけなので、姿や物はわかりません」
「そうですか……」
少しだけ嬉しかった。今まで誰も見えてもないし、感じてもいなかったために解放される。そして、傷の方はちゃんと手当し終わって、固定させるものを出して支えになるように補強してくれる。せっかく巻いた包帯の代わりは、紅色の血に染まっていき包帯の意味が無い。それにしても、傷に対しての応急処置がとても上手く、包帯の巻き方もちゃんとしている。
「あなたの……名前は?」
「私は
上野、
「奴が来た……」
「能力使いですか?」
俺は
「危ない!!」
深手を負った俺は癒に向かって突進を仕掛ける。押された彼女は、
「痛い!!ちょっと何……」
大きな音と共に、押された衝撃で電車の床に強打をして、痛みに耐えきれず叫んで俺を見て言おうしたが、ギョッと固まって驚いてしまっている。
「逃げて……生きろ…よ……」
腹部に大きな穴が空いていたが、俺の目だと大きな氷柱が刺さっている。乗客のみんなが俺を注目する。俺は吐血をして、倒れる。完全停車し、ドアが開いて騒ぎながら押し合い圧し合いでみんなが出ていく。
「死なないでください!! 直ぐに手当を……」
言いかける前に出させるように、ジェスチャーをする。
「ここは……危険……です……」
力が入らないのに頑張って起き上がって、最後尾の車両へと向かう。そして……
氷の力で窓を破って、彼女が入ってくる。一か八かで刺さった氷柱を抜いて、構えて「殺意」を飛ばしていく。殺気を感知したのか、あの微笑みは消えて恐怖と
「逃げるな!!」
俺は言葉を発した。発した後に跡を追いかけてるも、深手を負っている彼の身体は走れそうにもない、はずだった。右腕に包帯を外し、腹部に巻き始めていき自分で応急処置をしたり、代わりになるものを右腕に巻いたりして補う。
「くっ……このままでは左腕も使えなくなってしまう……」
俺はの左腕は、手から凍りついていることを確認して、急ぐが走ることができないので悩みに悩んだが、
「
彼女を探しに出ましたが、広いのと大勢の人で見えない。と思っていたが、改札口でオドオドしている姿が見えたために気配を消してそっと近づいて行く。が、気配に気づいたのか改札口を通り抜けてまた走り逃げていくが、それを見てまた追いかける。
改札のICカード専用の方にタッチして、速度も落とさず通り抜けて人混みを掻き分けて進む。早く見つけてケリを付けないと左腕が完全に凍ってしまう。ぶつかって
「きゃっ!!」
それは背中に当たり、重みの反動に負けて上がり終わる直前に足を滑らせて、転けて
彼女は体重が重くなるのを感じるが恐る恐る振り向いて、俺の怖い顔と氷柱があることに気付いて恐怖のあまりに涙を浮かべて泣き始める。
「嫌……殺さないで……」
彼女は殺されたくないと強く思い、お願いを試みた。が……
「何もしてない人を、なんも罪のない人をお前は殺した。それを見て、俺は放ってはおけないし、お前を生かしてはおけない……じゃあな……」
「お願い、やめて……嫌、嫌ァァ……」
俺は
ライトブルーのワンピースから血が滲み始めて、滴り落ちる血で血溜まりが大きくなり、彼女は即死に至らずに、意識が
「痛い……痛いよ……苦しい……苦しいよ……」
「これがお前がやった罪だ。何処かで償うがいい」
この言葉を聞いた彼女は助けてと言わんばかりにまた呟く。
「死にたくない……誰か……誰か助け…………て……」
彼女の手がハタリと堕ちて、意識が完全に無くなり絶命に至った。俺は成し遂げたかのように天井を見つめ、彼女の遺体を抱えて池袋に出た。
「嗚呼、神よ……俺に罪の償いをさせてくれ……」
「願い通りにしてあげるわ。また会えるのを楽しみにするわ」
この時俺の腹部に激痛が走る。腹を見てみたら、包丁が奥深く刺して抜き、服が血のせいで赤く染っていく。口の中が鉄の味がして、匂いも鉄の匂いがし、何かが口から伝うのを感じた。
『死ぬのか。できたら俺の手で終わらしたかった……』
その声は女の子で、意識が朦朧とする中、虚ろな目で俺は見る。池袋の東口向かって歩いて行く姿しか見ることができない。
「ゴフッ……朱……鷺…………」
血を吐いて彼女の上に重なり、そのまま意識が無くなった。血と一緒に……。
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