なりたいこと


若くて綺麗でいようとしなくていい、わたしは早く年をとりたいと思いました。うんと幼いか、うんと年をとっているかでよいのです。中途半端なわたしはとても苦しかった。若くて頼もしい、一見自由な時代の本当は、息苦しい渦の中心でもありました。ずっともがいていなければならなかった。


毎日毎日が穏やかで、楽しいのかと疑問を持たれるほどで構わないからわたしは早く年をとりたいと思いました。邪魔者にされてもいい、早く本当の自分の世界を持ちたかったし、詩人のように毎日毎日つぶさなことがらをすくっては記録していたかったのです。


薔薇でなくていい、しおれていく花ですら美しいんだということを知りたかった、毎日を晩年のように過ごしたかった。


何もかも許すことができるし、何もかも諦めることができるからわたしは早く年をとりたいと思いました。わたしは老人になりたいのです。誰にも目を向けられず、好意も嫌悪もいりません。太陽の下の日陰のように生きていたいのです。


失っていく感情があってもいい。自分であるということがわかるならそれでよかった、わたしは早く年老いた人間になりたいのです。

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