星夜祭

陽月

星夜祭

 年に一度、御山おんやまに星が降る。

 その日、村の男達は、御山に登る。落ちてきた星を採るために。

 御山に登ることができるものならば、皆。父親に連れられて登る幼子から、休み休み登る年寄りまで。

 星を採って、大切な女性ひとに贈る。それがこの村の習わしだった。

 星は、地面に落ちる前に、衝撃を与えずに受け止めるのが、最も美しい。その輝きは、衝撃で曇るから。

 けれども、落ちてくる星を受け止めるのは危険なもの。毎年、何人かは怪我をする。だから、幼子や年寄りは、星が降り止んだ後に落ちているものを拾う。

 一つだけ採って帰る者、いくつか採って最も良い物を選ぶ者、それはそれぞれの想い次第。

 決まりは二つ、持って降りられる星は、一人につき一つだけ。男は星をもらってはいけない。二つ目はつまり、誰かが捨てた物を拾うのは良いが、手渡し受け取ってはいけないということ。直接地面に落ちた星と、誰かが拾って捨てた星は輝きが違うから。

 星を採ったらそこで終わり、というわけではない。次に加工が待っている。

 翌朝までに贈り物にできる形に加工する。多くの場合は、装飾品に加工される。


「良い物はできたかい?」

 朝、居間に入ると母に尋ねられた。その母の髪には、新しい髪留めが輝いている。

「うん。それは父さんから?」

「そう。角を取って、穴を開けて紐を通しただけ。あの人は手抜きなんだから」

 そうは言いつつも、嬉しそうだ。

「あんたは、そんなに手抜きをするんじゃないよ」

「わかってる」

「今年もあの子にかい? あーあ、小さい頃は曇った石をそのままお母さんにってくれたのに。時が経つのは早いもんだよ」

 毎年変わらない母の言葉。きっと、年頃の男は同じようなことを言われているのだろう。

「朝ご飯食べたら、届けに行ってくる」


 向かった先は、彼女のお墓。

 三年前、病で他界した。

 墓前に、作ってきた布止めを供える。

「今年は、きれいな赤い星が採れたんだ。だから、花の形にしてみた。きっと、似合うよ」

 翌日も、翌々日も、その次の日も、供えた贈り物はその場にあった。

 去年や一昨年は、翌日にはなくなっていたのに。誰かが持って行った、動物が持って行った、それらの可能性が高いことはわかっていたが、彼女が受け取ってくれたように感じていたのに。

 今年は、「もうそろそろ私はいいよ。大切に思える人を見つけて」ということなのだろうか。

「これは、キミのために採ってきて、キミのために作ったんだ。最後でいいから、もらってよ」

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