パンストを裂かせるご近所の秘書

城西腐

第1話

 このところ仕事を終えて帰宅する頃になってもまだまだ空が明るい。そんな季節になっていた。

 たまたま定時ダッシュで早く上がれたと思ったところ、今日はそれに加えてゲリラ豪雨に見舞われた。

 早く帰れたので駅前をぶらつこうと思ったのだが最寄り駅に着く頃にぱらつき始めたので仕方なく家路を急いだ。

 もう少し早く降ってくれれば電車のダイヤも乱れて出会いが待っていたかも知れないと思うと消化不良な感は否めない。

 早く帰宅したからとはいえコレと言って何もやる事はない。テレビも朝のニュースしか観ない。


 僕は手持ち無沙汰にLINEの連絡先をスクロールしていた。

 だからと言って帰宅したここから誰かと都合がついたとしてもわざわざ出向くのかと思うと億劫で仕方なかったが、当てもなくスマホの画面をタッチしていた。

 しかしどうだろう、考えてみれば車を出せばそんな手間でもないのではないだろうか。

 普段平日は車で出歩かないこともあり気分転換にスーパーに買い出しに出ても良い。どうせ予定も無く暇なのだ。


 であればと、比較的家の近めの誰かに限定して数件程メッセージを送ってみた。

 この土砂降りの中だ。もしかしたら駅で足止めを食っている者もいるかも知れない。

 そう思ったところで1件LINEのメッセージを受信した。

「今帰りだけどどうしたの?」

 最寄り駅が同じユイからだ。

 先日カーセックスをしながら、「構わない」と言うのでパンストをギザギザに引き裂いて盛り上がった、知り合ったばかりの20代の秘書だ。遠距離恋愛中の彼がいるにはいるが、月に一度のペースでしか会えないのでと割と自由に過ごしているようだった。


「あと何駅くらい?珍しく今日早くてもう家だったりするの」

「3駅くらいかな特急待ち合わせてる。早い日もあるんだね、珍しい」

「そう、レアなんだよ。だからと言うわけじゃないけど、ってか外土砂降りじゃん?拾うからちょっとドライブ付き合わない?急ぐなら家直行とかでも良い」

「え?降ってるの?誰も傘持ってないけど…」

「流行りのゲリラ豪雨だ。駅着いたら絶対歩いて帰る気失せるよ」

「えー。じゃぁ送ってもらえるならお願いしたいかも…」

「じゃぁ15分後にバスターミナルいて!」

「あ、はい。じゃぁお言葉に甘えて…」


 そうと決まれば話は早い。

 僕はサッとシャワーを浴びながら入念にアレを洗い、踊るような足取りでずぶ濡れにならぬようバケツをひっくり返すような依然激しく降り続く雨を避けながら車に乗り込んだ。

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