『分岐点』

千代音(斑目炉ヰ)

輪廻転生

死への恐怖は自ら消してしまった。

変わりたいその一心で……


幸あれと自己に言い放った言葉は、

逆再生され、

ラジオから流れるノイズと共に、

ぼくの背中を押すのだ。


地平線と言うのは、真っ直ぐ横に水平ではないのだな。


ぼくは、あの世との境目で想う。


上も下かも解らない、

暗闇へと吸い込まれる、

来世に期待を抱きましょう。


そうやって、

何度も何度も転生を繰り返し。


分岐点の選択を自ら放棄してしまう。


目を覚ましたら、

ぼくの理想の世界。


想い描いた夢の世界。


「辛かったなァ……」


溜め息を一つ溢して、

次の扉を開こうと手を伸ばす。


「キミはまた同じ事を綴るだけなんだ。」


声がした先には、

ぼくが居た。


知らない、ぼくが居たんだ。


選択を嫌い答えすら出さない、挙げ句の果てには放棄し、人生を試供品の様に横歩きするばかり。


確かに放棄している。

だが、思考が行き着いた先がこの結果なのだ。


「ぼくの死は有る意味答え……」


「それは屁理屈。」


一寸考えて、知らないぼくが口を開く。


「キミは変わろうと死を選んだと言うけれど、同じことの繰り返しは果たして変われたと言い切れるのだろうか」


ラジオのノイズが聞こえた気がした。


進歩する気はないのだろうか?

ぼくは何がしたかったのだろう?

何度、幸あれと背中を押したのだろうか


「転生とは、生まれ変われる事では無いのか?」


「本来の意味ではそう有るが、キミがしているのは輪廻。

進歩するには転生をもしなければならない

分岐点から目を逸らすな、選択肢を選び答えたところで、キミは初めて転生できるのだ。」


ラジオのノイズが止んだ。


「幸あれ。」


知らないぼくはぼくの背中を押した。


少しの悪夢を観て居たのだろう。


ぼくの観る地平線は水平では無かったが、何処までも続いている。


そんな、気がする。

いや、きっと、そうさ。


輪廻、回り回ってまた此処へ帰ってくるのだろうか。


いや、違う。

ぼくは知っているぼくになって同じ場所に立つ。


その時ぼくの両目に映る世界は、試供品と言う使い切りではない。

選択をした結果という名の古傷が付いたものになって居るだろう。




14/12/07

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る