龍野とシュヴァルツリッターの力

有原ハリアー

彼の黒騎士、孤軍奮闘につき

 須王すおう龍野りゅうやと愛機『シュヴァルツリッター』は、周囲を無数の敵に囲まれていた。

(レーダーを見る限り、数は100を超える……だが視界の敵は、同列の中では下位の機体ばかりだ。突破する余地はあるぜ……!)

 大剣を振りかざし、魔力を噴射して吶喊する。

「遅い!」

 拳を振りかざした機体を、横薙ぎの剣で素早く両断する。

「もう一つ!」

 近くにいた同型の敵も、返しの一撃で胴と下半身を切り落とした。魔力の噴射出力を強化し、速度を上昇させる。

 すると、龍野の視界に警告メッセージが現れた。

(衝突する……!?)

 咄嗟に機体を左に捻る。すると、不自然なを見つけた。

 そこには「ガラスに似た装甲を有する機体」がいたのだ。

「増援か……! だが!」

 滞空しながら、左手の大盾を構えるシュヴァルツリッター。

 盾先端の一部分が展開する。

「持っていけ!」

 ロケット弾が3発斉射された。

 透明な装甲の機体は反応が遅れ、3発全てを受けて爆散した。

 シュヴァルツリッターは振り返らず、ひたすら速度を上げる。

(ッ、そろそろ地表付近じゃ限界があるな!)

 魔力の噴射角度を変え、高度を得んとする。

(今度はお前らか!)

 飛行中の赤い機体が一斉に、シュヴァルツリッターに剣を向ける。うち一機は、水色の光弾を放った。

「邪魔だっ!」

 だがシュヴァルツリッターは大剣の一振りで光弾を掻き消すと、真ん中の一機に盾を突き立てる。耐え切れなかった機体は両断された後、爆散した。

 他の二機には構わず、高速で突破する。光弾が飛んできているが、どれも適当な狙いだった。

「これなら……おっと!」

 地上から別の光弾が襲い来る。これまでのよりも大型だった。

「邪魔するな……!」

 大剣の切っ先を向け、魔力を充填する。

 そして三発立て続けに、光条レーザーを放った。

 光弾の主である水色の機体は、途端に爆散した。

「よし、後は突破するだけだ……!」

 包囲陣形の外端部手前まで来ていた龍野は、警戒を緩めず飛び続ける。

(ん? 一機、横から高速で接近してくるな……)

 龍野は高度を上昇させ、敵機を迎え撃つ。

 するとすぐ脇を、朱色の光弾が通り過ぎた。

(最大望遠……! あいつか!)

 およそ2km先には、紫色の敵が空中で剣を構えていた。

「面白れえ。一騎打ちと行こうじゃねぇか!」

 龍野はシュヴァルツリッターを加速させつつ、大剣を構える。

 対する紫色の機体もまた、剣を構えながら空を疾駆する。

(一撃で……決める!)

 鳴り響く金属音。


 果たして――紫色の機体は、頭部から足先までを両断され、落下しながら爆散した。


「よし、これで突破した!」

 龍野は予定のルートを進み――驚愕した。

 前方に味方を発見したからだ。

(巻き添えを食らわしちまう……。しゃあねえ、きっちり自分自身の尻拭いでもするか!)

 シュヴァルツリッターは来た道を引き返し、迫りつつある敵機の中に吶喊した――。

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