メカニーク・クオーレ

Azu

プロローグ

2月下旬。寒空の下霞みがかった太陽がその薄日を僕たちに照らすニューヨークの昼ごろ。優しい陽をそそぐ太陽とは裏腹に、街行く人々を凍らせようと冷たい風がピューピューと高い音を鳴らしながら僕たちを襲う。

そんななか僕たちはセントラルパークで毎月開催しているバザールに来ていた。バザールの日はニューヨーク中のデザイナーたちが一箇所に集まって出店を開く。2月のバザールは主にアクセサリー関連のお店が並ぶ。男2人が揃いも揃ってアクセサリーを買うのに僕は正直違和感を感じていた。それでも、何度目の最後か分からない最後のお願いを必死に頼みこんできた彼の言うことを聞いてしまう僕はつくづく甘いなと思っていた。

「アダム、お前ならどの色にする?」隣にいる親友がそう僕に聞いた。

彼にそう言われて彼が見ている陳列棚を見渡す。そこには色とりどりのピアスが並んでいた。シンプルなデザインから少し過激なデザインまで棚にびっしりと隙間なく並んでいる。少しさわればこの綺麗な陳列が崩れてしまいそうだ。

「そうだな…。この氷をモチーフにしているデザインとかいいと思うけれど」

僕はこの氷の結晶がモチーフになってるピアスを彼の目の前に持っててゆらゆら揺らせてみた。本物の氷の結晶の様にキラキラ輝いている。

「そうか?それよりこの青のリング状のピアスとかどうだ?このピアスならお前に似合うんじゃないか?」僕の話なんて一切聞かないで彼は話を進めていく。

「俺はこの黄色にするぜ。お前は…。」

どうやら彼の中では既にこのデザインに決定してるようだ。僕の意見なんてとっくにスルーされていた。いつもの事だが…。

「それじゃ、ルイスの言う青にするよ」

今度は彼が話す前に先に僕が言う。

「これでお揃いの買えたな!なんか以心伝心って感じになるな。」

「女性がよくやるよね こういうお揃いにするやつ まぁ、僕は構わないけど」

「そういうもんなのか?気にしたことなかったが。」

普通は男同士で同じものを買うなんて無いと思うし、人によっては気持ち悪いと思われてしまうかもしれない。それでも僕は素直に嬉しかった。こうやってお揃いのものを買うことが。

「俺たちはいつも一緒だからな。今までもこれからも。」

「ああ 大切な親友だ」

「卒業してもたまには遊んでくれよな。」

「わかってるさ」


しんしんと雪が降り始めた。

2人は歩く、新雪に染まる道を。

ルイスは黄色のアダムは青のピアスを片耳に輝かせて。

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