異世界にヒヨコごときが耐えられません。

@samitekizeharu

第1話ヒヨコ死す

 ピヨピヨ

 私はヒヨコである。

 男、いや雄である。

 恐らく、転生者である。

 何故、恐らくかというと、記憶が無く、人格と知識しか無かったからだ。

 ヒヨコである。何の変哲もないヒヨコである。

 中身は人であるが。

 しかも、ここは異世界と呼ぶものらしいではないか。

 元の知識から照らし合わせ、地球ではないことはわかっている。

 私は生きていけるのだろうか。

 ヒヨコだぞ。ヒヨコ。

 可愛さ抜いたら、何の取り柄もなくなってしまう。

 せめて、意志疎通をはかれる自分以外の生物がいればな。

 そうか、そうだな。

 探せばいいのだ。

 意志疎通をはかれる者を。

 答えは出ていた。

 さぁ、友達でも作るか。(錯乱)

 とは言ってもだ

 ここどこ何ですかね?

 地形的には、至って普通の草の生い茂った平原なのだが、いかんせん、ヒヨコでは些か、移動するにも苦労するだろう。

 なにせ、サイズ感がね……人間ならば、歩幅が広くそうそう苦にはならないだろう。

 てな訳でだ、闇雲に動かず様子を見ようと思ったのだが、ここで一つ思った。

 食糧どうするの?

 そう、食糧。食わねば死ぬという、呪縛。

 生き物であるならば逆らえぬ古の理。

 人間である身ならば、雑食であるがため、肉、魚、野菜を食えばいいのだろうが

 ヒヨコである、私は何を食えばいいのだろうか?

 あれ?何を食えばいいんだ?本当に?

 私は暫く知識を辿るべく、思考に耽っていた。

 …………………………

 確か、雑草とか果物、虫を食べるのだったか。

 雑草と果物は兎も角、虫は出来るならば避けたい。

 人間の頃の感性に引っ張られているせいか、嫌悪感が沸いてしまう。

 虫を避けて、まずは果物から探そうか。

 一先ず、果物がなっていそうな木に近づく。

 木に実はなっていた。しかし下には何も落ちていない。困ったな。ひよこの私では、木になっている、実には届かないではないか。

 私が手をこまぬいていると。(ひよこだから腕組みしても手が少しばかり届かない)

 遠くから轟音と共に猪が突進してくるではないか。

 うおっと。

 幸いにも、木に突進してきたようで、私自体は無事であった。

 それと、木になっていた実は猪によって落とされた。

 猪は、実を貪っていた。どうやら、この猪はこの実を食べるために突進したのだろう。

 猪は暫くすると去っていた。

 あの猪は、実をすべて食べなかったようだ。

 私はそれに感謝をし、この実を食べることにする。

 ひと啄み。

 甘い。ただほんのり甘い。

 私は、腹が減っていた。一つでは物足りなく、他に落ちている実を貪った。

 甘い。一粒目よりも甘い。どうやら甘味が蓄積されていくようだ。

 三粒食べただけで腹が膨れた。

 ヒヨコになったからわからないがあまり食が通らないようだ。

 少し腹が膨れたので寝ることにする。


 目が覚めた。日の角度を見てみるとまだ、昼のようだ。

 雲が少しばかり

 雲……

 否、あれはドラゴン。

 まさか、こっちにた近づいてないか?

 最期に見た光景がまさか口の中になるとは……

 ヒヨコはドラゴンに食べられてしまった。

 少し行動を変えていたら運命はこうはならなかっただろう。

 しかし、もう変えられない。

 ヒヨコは死んでしまったのだ。

 彼の物語は終わりを告げたのだった。

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