僕の消滅

もう満月だ。病院の屋上にある柵越しに月を見ている。僕は仕事が手につかなくなってとっくに辞めていた。僕はあなたがいなくては生きていけないのだ。と、気づきたくもなかったものに気づいてしまった。僕はもう、夢にすらしがみつけなくなっている。あなたがいない世界では虚しく時が過ぎていくのを痛いほど感じた。

いつ替えたんだろう。病室に戻ると、あなたの寝転んでいるベッドのシーツがピシッとしていた。病室は殺風景で花もなかった。ただ今日は、あなたが僕の前でユラユラ揺れているようだった。僕は狭くなった視界で家に帰った。僕は、あなたも好きだった牛乳を飲んで喉を潤した。そのあと、覚悟を決めたようにベランダに出た。

「この高さから落ちたら確実に死ねる。」

僕の中に自殺願望ではなく自殺欲求が生まれた。

「死んでしまったらあなたとはもう会えない。」

なんて考えても、あなたはもういないのだ。僕はもう迷うことはなかった。

「今生きている世界にあなたはいない。だか ら僕もいなくなればいい。もしかしたらあなたはすでに向こうで独りになっているかもしれない。だから僕もいかなければならない。独りにしないと、誓ったんだ。」

僕はあなたのところへ向かった。ずーっとずーっと下りていって、底が見えたとき、僕は頭を打つけていた。

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