ハイスペック園児 まさや君 其の7

あきらさん

第1話

「ねぇ、より子先生。先生は食物連鎖って知ってる?」

「知ってるわよ。まさや君も、そんな言葉知ってるなんて凄いわね! 食物連鎖っていうのは、生き物が生き物を食べる事で、地球上の流れが連鎖していく事なの。例えばウサギさん何かは草食動物って言われていて、草なんかを食べて生きているんだけど、その草食動物を今後は肉食動物って言われているオオカミさん達が食べるの。そして外敵の少ない肉食動物達が死んでしまうと、今後は土に帰って草や木の肥料となるのよ。その肥料を栄養として育った草木をまた草食動物が食べて、地球が成り立っているっていうのが簡単に言うと食物連鎖ね。虫とかお魚とか鳥さんなんかも含まれてるけど、食う物と食われる物が繋がっている、生き物のピラミッドのような仕組みの事よ」

「より子先生。ボクは食物連鎖の事は知ってるよ。気持ち良さそうに長々と話をしていたけど」

「そ……そうだったの?」

「ボクがより子先生に質問したのは、知っているのか知らないのかっていう、イエスかノーで答えられる質問なんだよ。より子先生は、もう少し人の話をしっかり聞けるようになった方が良いかも知れないね」

「す……すみませんでした」


 た……確かに少し得意気に話してしまったかも知れない……反省反省……


「より子先生。ボクは、人の話を最後まで聞かないのは失礼だと思っているから最後まで聞いていたけど、相手の力量も分からずに中身の無い話を長々と語るのは、相手の時間をムダにしている事と一緒なんだよ」

「は……はい」

「時間というのは命なんだよ。人の時間をムダにしているというのは、相手の命を奪っている事と同じなんだ。人が待たされてイライラするのは、自分の命を削られてるって本能的に分かっているからなんだよ」

「そ……そうですね」

「人の時間をムダにする人は、絶対に幸せにはなれない。待たせる事で人の命を奪っている自覚がない人なんて、幸せになれる訳ないんだ」

「お……おっしゃる通りだと思います……」

「ボクはより子先生には、絶対に幸せになってもらいたいと思ってる」

「あ……ありがとうまさや君」

「…………」

「…………」

「……より子先生。ボクに何か言う事ある?」

「…………今日も遅刻してすみませんでした」

「うん。良く言えました」


 な……何か、半強制的に謝らせられた気がする……

 でも、まさや君の言っている事は明らかに正しいので、つっこむ事は出来ない……


「より子先生。ボクが言いたかったのはそういう事じゃなくて、人間社会の中でも同じ事があるんじゃないかと思っているんだよ」

「に……人間社会でも?」

「うん。結局は人間社会も弱肉強食。弱い者は淘汰されて、強い者の食い物にされてしまうと思うんだ」

「た……確かにそうかも知れないわね」


 あなたは哲学者なの……?


「ボクはどんな形であれ、弱者になるつもりはないんだ。権力を振りかざすつもりはないけれど、ある程度社会的地位は高い人間になりたいと思っているんだ」

「そ……そうなのね。その歳でそんな事を考えられるなんて、凄く立派な事だと思うわ。先生、尊敬しちゃう」

「ありがとう。結局、強い立場にならなくては弱い者すら助ける事は出来ないと思うからね」


 この子は本当に末恐ろしい……

 このまま成長していったら、一体どんな人間になるんだろう……


「より子先生。もう30分も替えのパンツを探してるんだけど、見つからない。先生も一緒に探してください」

「あっ! はいはい!」


 何かさっきから変な動きをしていると思ったら、まさや君は熱弁し過ぎて別の便が出てしまったようだった。

 お母さんが替えのパンツを忘れてしまったようで、今日の所はみどりちゃんのくまさんパンツを借りて過ごすまさや君でした……


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ハイスペック園児 まさや君 其の7 あきらさん @akiraojichan

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