奇跡

理不尽な猫

プロローグ

奇跡を信じているだろうか?

僕はまったく信じていない。

努力しても大抵夢は叶わないし、成しても成らない事なんてこの世にたくさんある事も知っている。

もし、努力すれば夢が叶う世界なら今頃、世界中の大半の人がスポーツ選手かケーキ屋さんだろう。

それにこの世にはヒーローもいなければ、復讐に目覚めた怪人も世界征服を目論む秘密結社だってない。

奇跡も魔法も超能力も何もかもない、こんな漫画的、アニメ的なモノを僕は信じていない。

……いつからだろうか、何も信じることが出来なくなってしまったのは。

自分が特別では無いことに気づいた日、奇跡なんてものがないと気づいた日。多少遅いかもしれないが多分、中学生の時には確信していただろう、小学生の時から疑ってはいたがあの時の僕はそれでも信じようとしていたはずだ。

昔から僕はあまり運動が得意ではなかった。そのせいかよく遊んでいた、近所の4人組の中では1番下にみられていだろう、よく仲間外れにされたし、鬼ごっこする時は必ず鬼は僕だった。

けれども仲が悪かったわけではなかったし、嫌いなわけでもなかったがそんなちょっとした事が続き、幼かった僕は自分を出来の悪い奴だと思い始めた。自分はヒーローにはなれないのだと感じた。

そして自分に期待しなくなり、そして信用しなくなった。

しかし、僕は4人の中でリーダー格だった奴に密かに憧れを抱いていた。

そいつは学年一足も速くて、よくモテて、度胸もあった。

きっと、こういう奴が物語の主人公でヒーローになれるのだと信じていた。

そんな憧れも、中学の時そいつが不良グループの使いっ走りにされてるのを見てなくなった。その時、確信したんだ、ヒーローなんていないのだと。

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