月
そして月曜の朝、またしても重い足取りで学校へ向かう。夏休み中あれほど楽しみだった登校がこんなにも重苦しく感じられてしまうとは、アルフレッド・アドラー氏の言葉である「人生が困難なのではなく、自分が人生を困難にしている」を思い出す。
なんとか学校へは着いたものの時すでに始業時刻であり、僕は学校を休むことにした。遅刻して加害者になるより欠席して被害者になったほうがよいという訳だ。しかし、振り返ると目の前に人が立っており、帰ろうとした体が固まる。
「ごきげんよう
僕の名前を呼んだのは、同じクラスメイトであり相変わらず目つきの鋭い
「今日テストだけど」
我が高校では夏休み明け、実力テストが行われるのだが、僕はすっかりそのことを忘れていた。これは失恋など関係なく、夏休み一日目からずっとテストのテの字も考えず過ごしていたからである。
教室の扉を開けると出欠を確認している最中だったので、僕はなるべく
前から後ろへ問題用紙を受け渡しテストが始まるが、まったく勉強をしていない僕が問題を解けるはずもなく、退屈な時間が始まる。時間の無駄と思ったので帰ろうとも考えたがやめた。
ところがその時問題が起きた。しばらく問題用紙を眺めていると、なんと、あろうことか僕の右脇に解答用紙が現れたのである。それはおそらく後ろの席から差し出された物であり、まるでこれを使ってくれと言っているようだったが、こんな大胆な行動が許されるのだろうか。これには「幸福は大胆な人に笑いかける」と謳ったウェルギリウス氏も言葉を失ってしまうだろう。しかしこのチャンス、逃すような男では僕はなかった。解答用紙を受け取り、写す態勢を整えいざ一問目――
「そこ、ペンを置きなさい」
写すことができなかった。それは教師に見られたからでもあったが、試験時間が終了したからでもあり、そして、僕の解答欄に、すでに答えが書かれていたからである。
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