魔女の楽しみ

@Kanoooo

第1話

 みどりの小さなカエルが跳ねた。8歳児は黄色いタオルを首に掛けている。カラスは空一面を覆うほど飛んでいる。

 風に揺られる風船のように彼は勘に従っていた。カーテンコールみたいな木のざわめきが彼を呼び戻す。

 「そーなんしたな」エディ(8歳児)は辺りを見渡し行く宛もなく進み続ける。おもちゃのモノレールだった。ココに来る前にうずらの卵を六本の腕で食べ続ける夢を見ていた。占夢をすると吉兆だった。「なので安心♪ 夢は気持ちのパトロン」

 牧歌を歌っていると遠くで光を見たので近付く。窓が昼白色の明かりで光っている。青で塗られた小屋だった。他人が居ると思ったので扉を叩いた。「誰か居ますか」

 鼻の長い巨大な老婆が現れる。「どうしたんだいボウヤ」

 「そーなんしました。家に入れてください」

 老婆は片側の唇を上げた。「いいよ。入りなさい」

 「わーい♪」エディは老婆に寸刻のコケットを見た。すぐに中に入る。家には木で出来た机と椅子。薪と暖炉と子供くらいの大きさで人の形をしたお菓子を見つけた。「すげー。食べていい?」

 「ダメ」

 「食べたい食べたい食べたい」

 「いいよ」

 エディは人型お菓子の右手を食べた。自分の手を見た。エディは右手がお菓子になっていた。「お菓子になってる!」

 「わたしは魔女。お前が食べたのは元々人間さ。今のお前みたいに家に入って悪ふざけして私が気に入っていたコップを割ったから魔法で身体をお菓子に変えた。それを食べたお前にも魔法が移ったのさ」

 「元にもどして」

 「どうしようかねぇ。治ったら出ていくだろう。お前が居なくなると寂しいねぇ。じゃあこうしよう。また子供が迷ってココにやって来る。その時その子供をこの家にずっと住むようにさせな。そうしたら右手を元に戻す」

 数日後。小屋に子供(パナム)がやって来た。エディが扉を開けた。

 「外は雨が降ってるのでしばらく家に入れてください」

 「いいよぉ。早く中に入りな」

 パナムは暖炉の近くに座って薪を燃やす火に手をかざす。後ろからエディが黒いタオルを渡した。

 パナムは顔を拭く。「ありがとう。君の名前は何て言うの」

 「エディだよ」

 魔女は椅子に座り猿の睾丸を食べている。パナムはその人を見る。「エディはあの人の子供かい?」

 「ううん。違う。でも一緒に暮らしてる」

 エディの右手が布で巻かれている。パナムはそれを見る。「右手はどうしたんだい?」

 「怪我したんだ。でも傷は浅いよ」

 「そう。すごい。人の形をしたお菓子が在る」

 「食べるかい?」

 「ううん。こんなすごいもの食べられないよ」

 「外に出よう」

 「雨降ってるよ。風も吹いてる」

 「いいだろう? また家に戻って身体を拭けばいいんだから」

 二人は家から出て森を冒険した。たくさん遊んだ。へとへとになったエディが帰り道で足を挫いた。

 「大丈夫かい?」

 「大丈夫。・・・・・・いて」

 「立てる?」

 「立てない」

 「僕がおんぶするから背中に乗って」

 エディは乗せてもらった。「大丈夫?」

 「平気、平気。家はどっちだい?」

 「・・・・・・・」

 二人は家に到着した。パナムがエディを下ろす。「お腹減った」

 エディはナイフでリンゴを刺したあと人型のお菓子を指差す。「このお菓子食べるかい?」

 「え? いいよそれは」

 「いいんだ食べてくれて。早く食べないと腐っちゃうから」

 「そう? それなら食べるよ」

 パナムがお菓子の手の部分を食べようとしてエディが真摯に止めた。「食べるな」

 「どうして?」

 「食べたら自分がお菓子になるんだ」エディは猿の睾丸を食べていた魔女を押して倒した。

 「んはぁっ!」魔女は腰を押さえている。

 エディはパナムを連れて小屋を飛び出た。豪雨。紅に染まる空と曇天。やさしい風。凍ったり燃えたりする木々。二人は逃げた。エディは心地善かった。嘘をついたときの遺伝子組み換えされた食物のような罪悪感に開放され喜びで満ちていた。エディは自宅に帰った。右手を見ると元に戻っていた。













―――――――――――――――――

エディの設定

・身長130センチ。黄色い髪。ボロボロの服を着ている。 

・父は自殺し母は鬱で一日中寝ている。周りの住人から煙たがられている。一昨年に母から腕にタトゥーを彫られた。食事は1日1食在る日がある。友達もおらず一人で食べ物を探しに森へ出掛けた。

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