第18話 2年前 ③
そこから数カ月。ただただ 時間の中を漂っていた。 あれから季節がいくつか過ぎたが
いまが 暑いのか寒いのかもわからない。ただ家にいると 夫と 息子が帰ってきそうで期待をしてしまう。
探しに行かなくちゃ。2人を。外に。いいや 2人は死んだんだ。私の運転する車の中で。相手のトラックの運転手は深夜勤務を終え 事務所に帰る途中だった。ついうとうとしてしまったと 涙ながらに謝罪された。
でもそんなことはどうでもいい。 2人は死んだ。人は死んだらどうなるのだろう。そうか 川を渡るんだ。三途とかいう川を渡れば 天国があってそこに2人が楽しく過ごしているとか誰かが言っていた。 そこで会えるんだ。 ・・・ 川だ。どこにある。
電車に1時間くらいは乗っただろうか。駅を降りると キャンプ場直通という臨時バスが出ていた。キャンプ場には なにがある、川。そうか 私の愛する2人は そこで遊んでいるんだ。わたしを待っているに違いない。
バスを降りて 何組かの家族が 歩いていく方向についていく。 2人を探さなくっちゃ。探さなくっちゃ。探さなくっちゃ。
「おーい!」どこに隠れているんだろう。
ずいぶん探した気がする。風が涼しくなり 影もだいぶん長くなった。つかれた。座ろう。
---------------そうだった 2人は死んだんだ。
このまま ここで眠ろう。数日間の我慢でわたしを きっと2人が迎えにきてくれるから。
「ままーー」ああ子供の声がする。意外と早く来てくれた。
「ままぁーーー」 はぁい、ここにいますよ。
「まぁーまぁーー」・・・違う。現実だ。本物の子供の声がする。
起き上がって 周りを見回す。 ロングヘアーを2つに結んだ 女の子が泣いていた。
サンダルが片方脱げている。天使にしては 鼻水出しすぎだ。
迷子だとはわかっていた。 とっさに出た言葉は
「おばさんが ママのところに連れていってあげるからね。」
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どうしてだろう 知らない子供と家に帰ってきた。
女の子に ママがすぐに迎えに来るからというと 泣きつかれたのか彼女は眠ってしまった。
その寝顔を見ながら ある思いに至ったのだった。
そして私は 工作用のハサミを持ってきた。ひと思いに。
ざくっと音がする。
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