第1話

榛野初実

第1話

 青春なんてなかった。

 私は大学教授の旦那がいる。17個上のダンナだ。出逢いは共通の知り合いがいた。芸能人のようなことをいうけど、本当にそれ以上でもそれ以下でもなかった。

 高校時代の友人が大学への準備をしている時に、わたしは結婚準備をしていた。そこに優越感などはもちろんなくて、私からすれば他の友人としていることは変わりなかった。人生においての次の準備をしていたのだ。

 ただほんの違ったのは、友人が話す恋バナだ。彼氏と遊園地に行ったや、買い物に行った。華やかで輝いて爽やかな話の種が私にはなかった。共通してたのは、セックスのことだけだった。ただそれも"している"ということだけで、甘酸っぱく気恥ずかしい彼女たちとは違って、私たちのはなんとなくねっとり汗っぽかった。 

 不満とかがあるわけではない。大切にされたという自覚もある。でも、私だって初めてはダンナだったんだ。



 片野櫁。旧姓は金城だ。

 高校時代まで通っていた習字教室の昔なじみの大学に見学に行く事になり、そこの大学に教授として務めているのが旦那だ。当時は助教授だった。

 大学に行くことに意欲的ではなかった私に母が昔なじみの女の子に頼み込み、大学を案内してもらうことになった。

 「ミツちゃんはどうして大学に行きたくないの?」

 ほっといてくれと喉元まで出たが、まさか仲良くもない子の案内を親切に買ってくれた人にそんなことは言えず、曖昧に笑った。

「私、頭よくないからさ」

 ほんとうは特に悪くもなくて、大学もどこにも受かるところがないわけではなかったけど、学生の自分が想像できなかった。実際にこうやって来てみても、通いたいなんて感情は沸きもしない。だからといって、働いている自分も想像できていなかった。

 「あ、ここが私の研究室ね」

 しばらく学校を案内してもらって、休憩場所にされたには人気のない一室だった。中はこじんまりとしていて質素だ。キョロキョロとしていると、後ろで声を上げたのは紛れも無く昔馴染みで、慌てたようにわたしに謝罪をして隣の塔に忘れ物をしたことを口早言って出て行った。私は一人になった。

 「え」

 ひとりにされて、最初は暇潰しにキョロキョロしていたけれど、元々興味がないということもあり、真ん中の机に肘をつき椅子に座ってぼーっとしていた。当時は携帯もなく、大学案内で暇になるなんて思ってもいなかったので本とかも持参していなかった。

















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第1話 榛野初実 @hatsumi

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