第2章 緑の奇跡
第31話 異世界といったら?
「霧が濃い…遺跡ん時より濃いんじゃねぇか?」
「遺跡?なんの話だ?」
メイアねぇさんはクラスメートでは無い為、遺跡の話を知らない。なので説明してあげる。
「俺たちはノア師匠の元に来る前に霧に包まれた遺跡に行ったんだ。そこで世界転移っつう罠?にハマって世界各地へ散った。その先がノア師匠の元で、弟子に誘われたんだ。」
「へー、でもお前ならマジックハンドで防げたんじゃねぇのか?」
「………動揺してて。」
そう、あの時俺は動揺してしまった。そのせいで世界転移という魔法を防ぐ事が出来なかったのだ。
「え〜、海斗あれで動揺してたの?なんか嫌に的確な指示出していたし…」
「うっ!それは、その、ラノベで似たような展開を見たから…」
「嘘でしょ!?確信があったわけじゃ無いの!?」
「ご、ごめん…」
素直に謝る。あれは早とちりだった。世界転移が世界各地に飛ばされるという可能性も無いのに集まるように指示を出してしまった。結果的には正解だったが、だからといって良かった訳では無い。
「おい、止めろよ。海斗だって全能じゃねぇんだ。間違いの一つや二つはある。」
「うっ…そうね…悪かったわ。ごめんなさい。」
「僕も、海斗に任せきりにし過ぎた。」
「海斗、お前も自分だけで背負いこむなよ?オレもいるからっ誰だ!?」
突如メイアねぇさんが言葉を止め、霧を睨む。
メイアねぇさんの異能は超直感だ。俺も警戒するのが身のためだろう。
そう思い、俺も拳を構える。火野さんと翔太も俺たちの姿を見て武器を構えた。
「気配は絶っていたはずですが…貴方は随分と感が鋭いようだ。」
霧の向こうから男の声が聞こえた。
誰だ…この霧の中で何故普通に俺たちを見つけられる?
「そう警戒しないで下さい。むしろ警戒したいのはこちらなのですから。」
声の主は近づいて来ているのか、霧の中に影が現れ、少しずつ濃くなっていく。
そして霧を抜け、姿を現したのはーー
「エルフ…?」
「おや?そちらはご存知のようで。その通り、私はエルフです。」
「………フだ。」
「なんと?」
「エルフだー!」
俺は彼に飛びかかった。
「ひっ!?」
「ばっか、待てよ。」
だが捕まえる寸前、首根っこをメイアねぇさんに掴まれる。
「うぐっ!?ま、待って…死ぬ…」
そこまで言ってようやくメイアねぇさんは離してくれた。
「ゴホッ、なにすんのさ!メイアねぇさん!エルフだぜ!異世界っていったら魔法、エルフ、ドワーフ、ドラゴンっていうくらい欠かせない奴らだ!せっかくだし触っておきたいじゃん!」
「あの…エルフを珍獣みたく見るのはやめてもらいたいのですが…」
エルフの男が文句を言ってきた。
「おおっと!これはすいません!しかし噂に違わずエルフは耳が長いのですね!それに美形だ!もしや本当にエルフはイケメン、美人揃いなのでは!?そしたら是非とも見てみたいものです!は!そういえばエルフはとても長寿なのだとか?実は貴方も年齢が50を超えていたりするのですか?今の見た目は20過ぎといったところでしょうけど実際はどのくらいで!?それにグェッ!?」
話しかけていたらまたしても首を引っ張られる。
「海斗、興奮するのはいいけど程々に。エルフの人顔が引きつってる。」
どうやら首を引っ張ったのは翔太のようだ。
翔太に言われてエルフの顔を見てみると、確かに顔が引きっつっていた。
「あ、すいません。つい興奮して…」
「ま、まぁ、いいでしょう。
それよりも、貴方たちは何故ここまで?どうやってここへ?幻惑の霧を展開していた筈なのですが…」
引きっつった顔から一転、表情を引き締め、エルフの男は俺たちに問いかけてきた。
「何故と言われましても…歩いていたらここまで来てしまって。それに幻惑の霧は吹き飛ばしました、前が見えなかったんで。」
だが俺は怪しくともこう答えるしか無かった。
「………はぁ、分かりました、信じましょう。このまま真っ直ぐ進めば我らの村です。私は話を通してくるので先に戻ります。」
「え?あの、信じてくれるんですか?」
「まぁ、害があるような顔をしていないので。それに貴方みたいな化け物を下手に刺激する気はありません。」
そう言い残し、エルフの男は霧の中に消えていった。
それにしてもあのエルフの男は最後に不思議なことを言っていた。
化け物、一体誰の事だ?
「メイアねぇさん、かな?」
「ん?呼んだか?」
ようやく警戒を解いたメイアねぇさんが俺の声に反応した。
「いやさ、あのエルフの男が最後に化け物って言ってたから誰の事かなぁ?って。」
「へぇー、つまり何?お前はオレの事を化け物だと思ったのか?」
やべっ!ついうっかり口を滑らせた…ここは何とか誤魔化さないと…
「いや?それとは別の話でメイアねぇさん事を考えたんだよ。」
「オレに嘘は意味ねぇぞ?」
メイアねぇさんが俺の嘘を素早く見破った。
しまった、この人の異能は超直感だった。
「さーて、覚悟はできてんだろうな?」
「ま、待って!止め、ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
〜〜〜〜〜
「いひゃい…」
「大丈夫?メイアさんも何もあそこまでやんなくても良いのに…」
あぁ、火野さんは優しいなぁ。
あれから顔が腫れ上がった俺は、火野さんの治療を受けていた。
「あいがとう、火野ひゃん。へもこれは俺が悪かった。っともう大丈夫そう。手間掛けさせてごめんね?」
「いいわよ。また怪我したら治してあげるわ。」
おお!有り難い!火野さんには感謝しか無い。
「それで?何でオレが化け物だと?」
俺が治療されるのを見ていたのか、治療が終わると同時にメイアねぇさんが話しかけてきた。
「あぁ、別に大した理由じゃないんだけど、このメンバーの中でメイアねぇさんが一番強いから…」
「確かにオレは一番強いかもしんねぇ、でもオレはお前に言っているように感じたぜ?」
「俺に?そうだとしたら、なんだって俺が化け物なんだ?」
「オレに分かるかよ。他の奴に聞いてみろよ。」
仕方がないので火野さんと翔太にも聞いてみる。
「私も分からないわ。ごめんなさい。」
「あぁ、いや、こっちも無茶な事聞いた。」
「あ!あれじゃ無い?海斗の精神が化け物だと言ったんじゃなーー」
ふざけた事を抜かした翔太を殴り飛ばす。
フッ、悪は退治された。
しっかし、化け物って本当に誰に言ったんだ?
そんな事を考えながら歩いていくうちに、霧が晴れていき、目を疑うような光景が飛び込んできた。
それは木の根の城壁。魔法で作られたらしい自然の壁だった。
「うわぁ!すっげぇ!あそこのエルフ門番かな?話は通してもらえるってあのエルフの男が言ってたし、行ってみようぜ!」
目線の先には2人のエルフが木の根の城壁の上にいる。
俺は3人を連れて、エルフ達の元へと向かった。
波乱に満ちた、エルフの村訪問はこうして始まった。
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