第27話 俺はひたすら殴る

 ラッキー!相手は魔法の塊?俺と相性抜群じゃん!


 敵は魔法の塊、それを聞いた俺は両手にマジックハンドを発動する。

 そのまま一歩踏み込んだ。


「マジックハンド!からの震脚!」


 発衝は使わない。魔法の塊だと言うのなら衝撃は通じない可能性が高い。

 だから俺はマジックハンドを発動してから震脚で跳んだ。


「貰った!」


 そのまま突っ込みーー


 バリバリバリバリ!


 感電した。


「アババババババ!?」


 やっちまった…俺が魔法に触れんのは手だけだった…


 確かに俺の一撃は当たった。だがエレメントの纏っていた電撃が俺の体に直撃したのだ。

 プスプスと煙を上げながら転がり離れる。


「痛ってー!超痛てぇ!」


 痛かった。凄く痛かった。


「テメェ!ぶっ殺してーー」

『キィィィィィィ!』


 イラついて悪態をついたところで突然エレメントが鳴いた。


 なんだ!?てかこいつ鳴くのかよ!


 まさか鳴くとは思ってもみなかった。だがそれよりもマズイ事態だ。

 エレメントの纏っている電撃が巨大になってきているのだ。


「おぉっと?これはマズイ予感…」

「もう…いい。いいから逃げろよ…海斗ぉ!」

「へっ!そう言われちゃあ、絶対に引けねぇな!」


 決めたんだ。俺がメイアねぇさんを守るって。


「いくぞ!」


 俺は走り出した。

 震脚は使わない、エレメントとの距離は20メートルも無い為、震脚では距離が近すぎる。

 だから走るしか無いのだが…


 キツイ…攻撃の速度が速すぎる…


 エレメントの攻撃は電撃、俺の走りでは避けられないのだ。さらに背後にはメイアねぇさんがいる。

 そのため俺は、電撃をマジックハンドでさばく。

 電撃が直線的に俺に向かって飛んできているためなんとかさばけているといった現状だ。


 マズイ、マズイ、マズイ。震脚は使えない、かといって走るには攻撃の間隔が短い…


 俺は焦る。このままではジリ貧だ。なんとか勝てる方法を探す。


「海…斗。もうほっといてくれ…このままじゃ、オレたち共倒れだぞ…」



 出来るか!俺のせいでこんな状況になってんだ!見捨てるなんて真似は絶対に出来ねぇ!


 そう言いたかったがもう声を出せる余裕も無い。


 考えろ考えろ考えろ考えろ!俺が使える技で!この状況を打開できるやつは!?


「もう…やめてくれよぉ…オレの事は諦めろよぉ…」


 ふざけんな!誰が諦めるか!俺がこのまま勝てねぇって、誰が決めた!

 ………俺が、このまま?


 俺の思考に何かが走る。


 なんだ?考えろ!このまま…このまま?

 そうだ!!!


 気づいた、そうだ!俺は馬鹿か!いや馬鹿だ!


「震脚!」


 そうだよ、震脚の距離は50メートルが限界だ。でも、限界であって常時ではない。ならばこのままではなくもっと威力を弱めて、小回りが効くように。


「改め、瞬身!」


 状況が、傾いた。


 迫る電撃、それをマジックハンドで弾き、すぐさま瞬身で進む。

 瞬間一度で5メートル程の距離を詰める。

 背後にはメイアねぇさんがいるため、一直線に。4回程繰り返し、エレメントの目の前まで来た。


「終わりだ!マジックハンド!」


 一撃、加えようとした、だがーー


 しまった!近すぎて弾けない!


 距離を詰め過ぎたあまり、またしても打ち込んで来た電撃を弾け無かった。


 バリバリバリバリ!


「あああああぁぁぁぁぁ!?くそったれぇぇぇぇぇ!!」


 先程食らった時よりも威力が強く、流石に痺れたが気合で無理矢理体を動かし、一撃を叩き込んだ。


『キィ!?』


 怯んだ隙にすかさずもう一度殴る。さらに殴る。もひとつ殴る、殴る、殴る、殴る、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。


『ギ…キキキィィキキ……』

「と…どめ……だ…!」


 最後にもう一発、倒れこむ様に殴る。


 そして遂に、エレメントは消滅した。



「う…しゃぁ…メイアねぇさんの…仇…取った…ぜ…」

「勝手にオレを殺すなよ!」


 痺れた俺のセリフに、メイアねぇさんの素晴らしい突っ込みが入った。

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