第25話 師匠との約束

 あぁー!目が冴えて眠れない!


 まさかのメイアねぇさんと同じ部屋で寝る事になった俺は、緊張して眠れなかった。


「………………外行こ。」


 どうしようもなかったので外に出る。


 そして俺は空を見上げた。

 空には輝く星々と青い月が浮かんでいる。


「最初の頃は、興奮したんだけどなぁ。」


 今時は慣れてしまって興奮しない。慣れというのは怖いもんだ。


「………………………………………………………………………………」


 しばらく夜空を見上げ続ける。と、そこにーー


 コツ、コツ、コツ、コツ


 音のした方を向く。


「なんだ、ノア師匠ですか。」

「なんだとはなんじゃ。どうしたんじゃ?こんな夜中に空を見上げて?」

「いえね、ちょっと眠れなくって…」

「ほっほ、メイアが居たからか?童貞臭いのぉ。」

「っ!?!!そうっすよ!俺は童貞ですよ!


 ヤケクソ気味に答える。

 それにしても何故ノア師匠がここに…


「それで師匠、何の用で?」

「海斗…お前さん、そう遠くない内に、ここを出て行くつもりじゃろ?」


 そう真剣な表情でノア師匠は言った。


「俺言いましたっけ?」

「言っとらんよ。」

「じゃあ寝言で言ったんすね。」

「どんな寝言じゃ。見てたら分かるわい。」


 どうやら俺は分かりやすいらしい。


「ノア師匠、俺はそう遠くない内に確かに出て行きます。

 ノア師匠にはもちろん感謝して居ますし、ここが嫌なわけでは無いです。

 ただ、俺には大切な仲間達が居るんです。色々あってバラバラになってしまいましたけど、いつか全員と合流して、そして故郷に帰るんだと、約束したんです。

 だから…ノア師匠、不甲斐ない弟子を!俺を!、旅に出る事を、許してください。」


 俺は精一杯の誠意を込め、地面に膝をついて土下座する。


「ほっほ………分かったったよ。お前さんがそう言うのは。」


 ノア師匠は夜空を見上げた。


「………ええよ、行きなさい。どの道ここで技術だけを教えても、実戦でしか得られないものを身につける事は出来んからの。」

「ノア師匠……ありがとうございます!」

「ただ…一つ、約束じゃ。」


 約束?一体どんな…


「海斗よ。必ずここに帰って来なさい。強く無くてもいい、偉く無くてもいい、例え体の一部を失ったとしても…お前さんがここに笑って帰って来たのならそれでええんじゃ。」

「ノア師匠、約束します。」


 俺はノア師匠に誓いを立てる。


「俺は必ず、ここに帰って来ます。笑って、そして大手を振って…ここに帰って来ます!」

「うむ、約束じゃ。」



 この人と会ってから1日程しか経ってないのに、もう俺はこの人を師匠としている。俺の勝手な行動すらも、寛大な心を持って許してくれる。敵わねぇや、俺もこんなすげぇ人になりてぇ。



「海斗、明日からも頑張りなさい。時間が無いのならさらに厳しくいくからの。」

「あ…そう、なっちゃいます?」

「そう、なっちゃうの。」



 そんなぁー、この人の修行只でさえ厳しいのに、更に厳しくなるなんて…言わなきゃ良かったかも…


「儂は寝る、海斗も早く眠りんさい。」

「あ!そうだ!部屋割り変えて貰えませんか?」

「ふむ、お前さんがメイアに襲いかかることも考えて、メイアの修行の為に同室にしたんじゃが…海斗が無理じゃったか…」


 えぇ〜。なんつー事を考えて居たんだこの人は…そもそも襲いかかりでもしたらメイアねぇさんに殺されちまう。


「仕方がない、儂の部屋で寝るといい。」

「やっぱ寝るとこ他にも有るんすね…」


 その日から俺はノア師匠の部屋で寝た。






 俺はまだ弱かったから、その会話を誰かが聞いていたことに気づかなかった。

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